免税制度とは、海外旅行者に対して要件を満たした場合に、消費税を免除して販売できる制度です。2026年11月に免税制度が改正され、免税店の運営方法や必要な準備が変わります。
制度要件を満たせずに罰則を受けることがないよう、改正内容を正しく把握し、従業員への周知や体制整備が必要です。
本記事では、免税店の基礎知識や申請方法、新制度について解説します。免税店を目指す事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
▶︎POSレジ導入のメリットと効果:店舗運営を効率化する最新トレンド
【今回のコラムをざっくりまとめると…】
2026年11月から免税制度が改正され、購入時免税からリファンド方式へ移行します。免税店事業者には制度の適切な運用が求められます。免税店事業者の方やこれから免税店を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
免税店(輸出物品販売場)とは、外国人旅行者などの非居住者に対して消費税を免除して商品を販売できる店舗です。旅行者は所定の手続きを行うことで、消費税分を負担せずにお得に買い物を楽しむことができます。
免税店になるには、一定の条件を満たした上で決められた手続きを踏むことが必要です。具体的には以下の3ステップで進めていきます。
それぞれの項目を見ていきましょう。
免税店になるためには、まず所定の許可要件をすべて満たしているかを確認する必要があります。国税庁では、免税販売場ごとに許可要件を定めているためです。
具体的な許可要件は以下のとおりです。
1.消費税の課税事業者であること 2.国税の滞納がないこと 3.非居住者の利用する場所又は非居住者の利用が見込まれる場所に店舗があること 4.免税販売手続きに必要な人員を配置し、かつ、免税販売手続きを行うための設備を有する販売場であること 5.【2026年11月以降】免税販売手続や購入記録情報の提供及び税関確認情報の受領を適正に実施するための必要な体制が整備されていること |
出典:
国税庁|輸出物品販売場制度は令和8年11月からリファンド方式に移行します
2026年11月の制度改正後は、「免税販売手続や購入記録情報の提供及び税関確認情報の受領を適正に実施するための必要な体制が整備されていること」という項目が新たに追加されています。
従来のレジでは対応が難しいため、免税機能を備えたPOSレジの導入計画を早めに進めることが重要です。
許可要件を満たしていることを確認したら、次は店舗所在地を管轄する税務署に「輸出物品販売場許可申請書」と「購入記録情報提供方法等届出書」を提出します。輸出物品販売場許可申請書には、以下の書類を添付して申請しなければなりません。
審査を経て許可が下りれば、免税店として営業が可能となります。なお、税務署への申請書は、免税販売場ごとに作成する必要があります。
申請から許可までには2~3週間かかるため、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが大切です。
免税手続きは2021年10月以降、電子システムでの運用が義務付けられているため、免税対応のPOSレジや専用端末の導入が必須です。インターネット回線を通じて国税庁のサーバーに「購入記録情報(免税売上情報+パスポート情報)」をデータ送信するため、接続可能な環境の整備が求められます。
さらに、2026年11月の制度改正を見据えて、ソフトウェアのアップデートに柔軟に対応できるクラウド型POSレジを選ぶことがおすすめです。
免税レジについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。
関連記事:免税レジとは?導入のメリットから選び方のポイントまで解説!
【2025法改正対応】免税システムの選び方を徹底解説|比較ポイントやおすすめ製品を紹介
▶︎POSレジ導入のメリットと効果:店舗運営を効率化する最新トレンド
2026年11月から免税制度が大きく改正され、店舗での免税販売の流れがこれまでと大きく変わります。特に以下の2点が店舗運営にも大きな影響を与えるでしょう。
ここでは、具体的な変更点と店舗側が準備すべき対応について解説していきます。
引用:国税庁|輸出物品販売場制度は令和8年11月からリファンド方式に移行します
2026年11月から免税制度は大きく見直され、従来の「購入時免税」から「リファンド方式」へと切り替わります。
現行制度では、購入時点で消費税が免除され、出国時に持ち出しが確認できなかった場合に追加で徴収する仕組みでした。しかし、不正に免税品を国内で消費・転売するケースが相次いだため、制度変更が行われます。
リファンド方式では、購入時に一旦消費税を支払い、出国時に持ち出しが確認された物品に限り還付を受けられる仕組みです。制度変更に伴い、免税販売の情報を正確に処理できる免税システムを搭載したPOSレジの導入が必要となります。
新制度に対応したおすすめ免税システムは、下記の記事を参考にしてください。
新制度の導入により、店舗側の役割や業務フローは大きく変わります。従来と同様に購入者のパスポート確認を行うことに加え、購入情報を国税庁へ送信するシステム対応が必須です。
さらに、新たに加わるのが「購入者への還付手続きの案内」です。購入時に消費税を受け取るため、会計上は一度預かった税金を後に国へ納める処理が必要となり、経理業務の見直しも求められます。
一方で、これまで義務づけられていた免税品の特殊な梱包が不要となるなど、一部の業務は簡素化される点もあります。店舗側は新しい業務を担いつつ、効率化され負担が軽減される部分もあることを理解しておくと安心です。
免税手続きの項目 | 現行制度 | 2026年11月の新制度 |
会計時に税抜で会計 | 必要 | 不要 |
消費税の返金 | 必要 | 不要 |
免税データの作成と送信 | 必要 | 従来通り必要 |
一般品/消耗品の分別 | 必要 | 不要 |
消耗品の特殊梱包 | 必要 | 不要 |
消耗品の金額上限50万円のチェック | 必要 | 不要 |
通常生活用途の判断 | 必要 | 不要 |
免税店になるメリットは以下の5つです。
それぞれ解説します。
免税店は、同じ商品でも消費税がかからないため、外国人旅行客にとって魅力的な買い物先となります。近隣に非免税店があったとしても、価格面で有利な免税店が選ばれやすく、差別化しやすいのが特徴です。
さらに、免税店であることを積極的に広告や看板などでアピールすれば、安定したインバウンド集客が期待できます。日本国内の景気に左右されず、外国人観光客からの売上を確保できる点は、経営の安定にも直結するでしょう。
免税店では消費税分が免除されるため、旅行者は同じ予算でもより多くの商品を購入できる点はメリットです。その結果、1人あたりの購入額、つまり客単価が上がりやすく、全体の売上増加につながります。
また、「せっかく免税だからまとめて買おう」と決断を促し、通常よりも購買意欲が高まることが期待できます。さらに、「あと〇〇円購入すれば免税対象額になるから」と抱きあわせ購入も見込め、客単価アップが期待できるでしょう。
免税店になれば、ターゲットは国内のお客様に加え、世界に広がります。免税店が地域に増えることで、外国人観光客を呼び込みやすくなり、名産品の販売促進や観光関連サービスの需要拡大につながります。
商店街ぐるみで免税化すれば、エリアの魅力度も上がるでしょう。観光客が免税店を訪れることで周辺の飲食店や宿泊施設の利用も活発になり、地域全体の経済循環が強化されるのも大きなメリットです。
地域全体で免税対応店舗が増えると、商業エリア全体が「Tax Freeエリア」として認知され、観光ガイドや旅行サイトでの露出が増える可能性があります。
国内外から「買い物に便利な地域」として注目されれば、さらに多くの観光客を呼び込む効果が期待できるでしょう。地域の名産品や特色をアピールする機会も増え、結果として地域全体の魅力が高まり、活性化につながります。
インバウンド需要は国内の景気動向に左右されにくく、免税店にとって安定的な収益源です。円安が進んでいる現在は、外国人旅行者にとって日本での買い物がお得に感じられるため、購入単価が高まりやすい状況といえます。
国内消費が低迷している時期でも、観光客からの売上が下支えとなり、長期的に安定した経営基盤を築けるのが大きな強みです。
ここでは、免税店のやり方に関するよくある質問について答えていきます。
2026年11月から免税制度が見直されますが、免税店になるために行う「税務署への申請」という基本的な手続きは大きく変わりません。ただし、制度改正後は免税販売の流れや会計処理など、業務フローそのものが変化します。
とはいえ、制度改正により免税店の事務負担の軽減と旅行者の利便性向上が期待されています。そのため、申請段階よりも、改正後にスムーズに運用できるよう準備を整えておくことが重要です。
免税制度に対応できるシステムを導入することは必須条件です。特に2026年の改正後も柔軟に対応できるクラウド型システムは、ソフトウェア更新によるアップデートが容易でおすすめできます。
また、現場で利用する従業員が直感的に操作できるか、外国人旅行者への説明がしやすい設計であるかどうかも重要な基準です。初めて免税システムを導入する場合は、サポート体制が充実しているかも見ておくと安心です。
従来型のレジスターのみでは免税店としての許可を得ることはできません。免税店の要件には「免税手続きの電子化に対応していること」が明記されており、購入情報を国税庁のサーバーへ送信できる仕組みが必須だからです。
そのため、電子化に非対応のレジスターを使用している場合は、新たに免税対応システムを導入しなければなりません。法的要件を満たすためには、必ず免税システム搭載のPOSレジや専用端末の導入が必要です。
免税店として営業することは、インバウンド需要を取り込み、安定的な売上アップにつなげる大きなチャンスです。ただし、2026年11月から制度が大きく改正され、店舗の業務フローも変化します。
そのため、制度改正に柔軟に対応できるクラウド型の免税POSレジシステムを導入するのがおすすめです。早めに準備を始めれば、二重投資のリスクを避けながらスムーズな移行が可能になります。
店舗に最適なシステムを選定し、新制度に備えましょう。