近年の物価高騰や人手不足、消費者の節約志向の高まりなどから、飲食業界は依然として厳しい状況が続いています。
こうした状況を乗り越えるためには、補助金や助成金、給付金を活用し、経営を安定させたいところです。
とはいえ、
「飲食店が使用できる補助金や助成金、給付金って何があるの?」
「そもそも補助金と助成金、給付金の違いは?」
などの悩みがあるでしょう。
本記事では、飲食店が使用できる補助金・助成金・給付金8選をご紹介します。
【今回のコラムをざっくりまとめると…】
「どの制度を活用できるのか分からない」「補助金と助成金、給付金の違いが分からない」と悩む経営者も多いでしょう。本記事では、飲食店が活用できる最新の支援制度8選を紹介し、それぞれの特徴や申請のポイントを解説します。原材料費の高騰や人手不足、消費者の節約志向の影響を受け、厳しい経営環境が続いています。適切な制度を見つけ、賢く活用することで、店舗運営の負担を軽減し、成長のチャンスを広げましょう。
ここでは、助成金・補助金・給付金の基礎知識として、それぞれの特徴と違いを解説します。
助成金とは、雇用の促進や労働環境の改善を目的とした、厚生労働省管轄の公的な経済支援のことです。助成対象となるのは、従業員の研修や教育、育児や介護休業の取得促進などが挙げられます。
助成金を受け取るためには、一定の要件を満たす必要があります。要件さえ満たせば、基本的に受給できるため、審査のハードルが比較的低いのが特徴です。返済の義務はありません。
補助金とは、国や自治体が特定の事業活動や投資を支援するために支給する制度です。受給するためには審査があり、採択される必要があります。
補助金の申請には「事業計画書」の提出が必要です。支給額は数百万から数千万円と幅広くあり、助成金よりも多い傾向があります。
そのため、競争率が高く、審査も厳しいです。原則的に返済義務はありませんが、条件を満たさなかった場合や、不正があった場合は返還を求められます。
給付金とは、国や地方自治体が個人や事業者などに向けて支給する金銭的支援です。災害の被災者や低所得者、特定の業種などが対象となります。
給付金の特徴としては、迅速に支給されることが求められるため、申請手続きが簡略化されていることです。支給額は数万円から数十万円とあり、返済義務もありません。
助成金、補助金、給付金は、いずれも国や自治体から提供される制度ですが、それぞれ目的や条件が異なります。以下に具体的な違いをまとめます。
助成金 | 補助金 | 給付金 | |
目的 | 労働環境の安定 | 事業拡大や設備投資の支援 | 緊急時の生活・経営支援 |
審査 | あり(条件を満たせば支給) | あり | あり(条件を満たせば支給) |
支給額 | 数十万円 | 数百万から数千万円 | 数万円から数十万円 |
返済義務 | なし | 原則的になし | なし |
支給時期 | 後払いが基本 | 後払いが基本 | 制度による |
押さえておきたいのは、給付金や助成金は条件を満たせば、基本的には支給されることです。一方で補助金は、採択件数が決まっており、厳しい審査に通過しなければ受給できません。
助成金・補助金・給付金を申請する際の手順は、以下のとおりです。
ただし、2024年の申請手続きと比較すると、2025年は一部の制度で要件が変更される可能性があります。
助成金や補助金の申請が初めての方は、何から手をつければよいのか迷うことが多いでしょう。
商工会議所や管轄の窓口に相談することで、準備に必要な具体的なアドバイスを受けられます。
ここでは、飲食店が使用できる助成金・補助金・給付金一覧8選をご紹介します。ぜひ、参考にしてください。
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の業務効率化や売上向上を目的に、ITツールなどの導入費用を支援する制度です。5つの枠が設けられており、枠ごとに補助金額が異なります。複数の中小・小規模事業者が連携してITツールやハードウェアを導入する場合は、合わせて3,000万円まで上限が設定されています。
飲食店では、ECサイトの構築やPOSレジ、キャッシュレス決済、予約受付などのシステム導入に利用される場合が多いです。申請には、IT導入支援事業者の協力が必要で、導入後の効果報告も求められます。
対象者 | 中小企業・小規模事業者(飲食店含む) |
対象経費 | ソフトウェア購入費・クラウド利用費・導入関連費・セキュリティサービス利用料など |
補助金額 | 最大450万円、1/2〜4/5 |
管轄 | 独立行政法人中小企業基盤整備機構 |
公式サイト |
事業再構築補助金は、新規事業や事業再構築に取り組む意欲的な中小企業、個人事業主を支援する補助金です。採択率は低めですが、数千万円〜最大1.5億円の大きな支援を受けられます。
飲食店では、厨房機器や店舗改装、デリバリー事業の開始、研修費、広告宣伝費などに利用されることが多いです。申請に必要な事業計画は、指定の機関や金融機関など、第三者機関と一緒に策定する必要があります。
対象者 | 新規事業に取組む中小企業や個人事業主 |
対象経費 | 建物費、機械設備費、技術導入費、クラウドサービス利用費、広告宣伝費、システム開発費、研修費など |
補助金額 | 最大1.5億円(補助率1/2~3/4) |
管轄 | 中小企業庁 |
公式サイト |
ものづくり補助金とは、生産性向上や設備投資にかかる一部経費を支援する制度です。正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。
ものづくりに関係なく、生産性向上につながる設備の導入であれば補助の対象です。飲食店であれば、厨房機器やキャッシュレス決済、予約管理システムなどのデジタルツール導入に利用されています。
インボイス制度への対応や働き方改革の導入を検討している飲食店にとって、特に活用しやすい制度です。
対象者 | 中小企業(従業員数900人以下)、小規模事業者 |
対象経費 | 機械設備費、システム開発費、ITツール費、知財管理費など |
補助金額 | 補助額最大1億円、1/2~2/3 |
管轄 | 全国中小企業団体中央会 |
公式サイト |
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が持続的な経営に向けた販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。
対象となる経費が幅広く、枠ごとに補助金額が異なるため、どの枠で申請するか事前に確認する必要があります。
飲食店では、店舗の改装、広告宣伝、ECサイト開設、食品関連の開発費などに利用されることが多いです。
対象者 | 常時使用する従業員の数が20人以下 |
対象経費 | 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、新商品開発費、展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)など |
補助金額 | 最大250万円、補助率最大2/3(赤字事業者は3/4) |
管轄 | 商工会議所 |
公式サイト |
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その費用の一部を助成する制度です。
たとえば、飲食店にPOSシステムを導入し、従業員の最低賃金を引き上げる際に活用できます。賃上げする金額や人数によって助成金額は異なります。助成要件には賃上げが含まれているため、従業員がいない飲食店では利用できません。
対象者 | 事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げる中小企業や個人事業主 |
対象経費 | ECサイト、システム開発、ITツール購入、内装工事、経営コンサルティング、研修、車両(条件あり)など |
補助金額 | 補助額最大600万円、補助率最大90% |
管轄 | 各都道府県労働局雇用環境・均等部室 |
公式サイト |
事業継承・引継ぎ補助金とは、事業継承やM&Aをきっかけに新たな取り組みを行う中小企業や小規模事業者(個人事業主を含む)を支援する制度です。
一例として、飲食店が事業承継を機に冷蔵庫の増築と入れ替えや店舗改装を行う際などに活用できる場合があります。
「経営革新枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」の3枠があり、それぞれ補助上限が異なります。そのため、自店舗の状況に合わせて、最も適した枠に申請しなければなりません。
対象者 | 中小企業、小規模事業者 |
対象経費 | 設備投資費用、店舗・事務所の改築工事費用、廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、M&A支援業者に支払う手数料など |
補助金額 | 最大800万円、補助率:2/3または1/2 |
管轄 | 中小企業庁 |
公式サイト |
雇用調整助成金は、経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用維持を図るために実施する、休業、教育訓練、出向に要した費用を助成する制度です。
雇用調整助成金を申請するには、労使間で休業の具体的な内容を協議し、協定を締結した上で休業を実施します。
その後、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局やハローワークで必要な手続きを行います。
対象者 | 雇用保険の適用事業主であること、3か月間の平均売上が前年同期に比べて10%以上減少している事業主など |
対象経費 | 従業員の給与、教育訓練費、出向費など |
補助金額 | 上限額8.490円 / 1人1日あたり(状況により変動) |
管轄 | 厚生労働省 |
公式サイト |
トライアル雇用奨励金とは、経験不足やスキル不足などから就職が難しい求職者を3ヶ月間の試用期間で雇用し、その後の常用雇用への移行を促進する制度です。
事業者にとっては、採用コストを抑えられる点と、最大3ヶ月の試用期間があるため、採用のミスマッチが起こりにくいことがメリットです。
定められている条件をクリアすれば、トライアル雇用期間(最大3ヶ月間)にわたって奨励金が支給されます。
対象者 | 経験不足や長期失業などで就職が困難な求職者をトライアル雇用する事業主 |
対象経費 | トライアル雇用期間中の賃金 |
補助金額 | 月額最大4万円(条件によって最大5万円) |
管轄 | 厚生労働省 |
公式サイト |
前述した補助金や助成金、給付金以外にも、飲食店を支援する公的な制度があります。
ここでは、飲食店の経営を支える公的な制度をみていきましょう。
国税納付の猶予制度は、税金の支払いが困難な事業者に対し、一時的な納付の猶予や分割払いを認める制度です。
飲食店は売上の変動が大きく、特に原材料費や人件費の高騰により資金繰りが厳しくなることがあります。
この制度を活用すれば、法人税や消費税、所得税などの納付を最大1年間延期でき、資金繰りの負担を軽減できます。
また、黒字であっても、要件を満たせば猶予が受けられるのも特徴です。申請窓口は税金や社会保険料など種類によって異なるため、公式資料を参考にしてください。
新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付は、日本政策金融公庫が提供する公的融資制度です。
コロナ禍の影響を受けたスタートアップ企業や、事業再生に取り組む事業者を対象としています。融資限度額は7,200万円です。
この制度の最大の特徴は、「資本性劣後ローン」に分類される点です。資本性劣後ローンとは、通常の借入金とは異なり、金融機関から「自己資本」とみなされやすい融資のことを指します。
そのため、追加の融資を受けやすくなる点がメリットです。
ここでは、助成金・補助金・給付金の有効な調べ方を解説します。
まずは、東京などの地方自治体のホームページで助成金・補助金・給付金の情報を調べるのがおすすめです。自治体ごとに支援内容が異なるため、こまめにチェックしておきましょう。
助成金・補助金・給付金を検索する方法は簡単です。GoogleやYahooなどの検索エンジンに、「自治体名 補助金」などのキーワードを入力すると該当する制度を見つけられます。
それでも検索できない場合は、自治体のホームページ内にある「サイト内検索」で検索すると見つけやすいです。
また、自治体によっては申請の相談窓口を設けている場合もあるため、必要に応じて問い合わせてみるとよいでしょう。
J-Net21は、独立行政法人の中小企業基盤整備機構が運営する、中小企業向けの経営支援情報ポータルサイトです。
全国の助成金・補助金情報を簡単に検索できるため、飲食店経営者にも役立つツールとなっています。
J-Net21の「支援情報ヘッドライン」では、最新の助成金・補助金の募集情報が随時更新され、地域や業種ごとに検索が可能です。そのため、まずはJ-Net21で検索することをおすすめします。
また、J-Net21では経営に関するお役立ち情報や成功事例も掲載されているため、飲食店経営に役立つ情報も手に入るでしょう。
出典|J-Net21
本記事では、飲食店が使用できる助成金・補助金・給付金8選を紹介してきました。
紹介した助成金・補助金・給付金は、飲食店の経営改善、業務効率化、新規事業の展開、人材確保などに活用できる制度です。自店舗に適用できるものを選び、積極的に活用しましょう。
CASHERは、IT導入補助金の対象製品です。導入継続率99%の実績を誇り、幅広い業種や規模のお客様に活用されています。
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