
開業/店舗経営 飲食店や小売店の開業準備を進めていると、「管理会計」「財務会計」という言葉をよく目にします。ただ、説明を読んでも違いが分かりにくく、「自分の店ではどこまで必要なのか」「会計ソフトや税理士に任せておけば良いのか」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
【今回のコラムをざっくりまとめると…】
この記事では、まず管理会計と財務会計の違いをシンプルに整理し、そのうえで店舗でも実践しやすい管理会計の始め方を解説します。売上・原価・固定費といった基本的な数字の見方から、客単価や原価率、損益分岐点といった指標の考え方まで、できるだけ専門用語をかみ砕いて紹介します。

飲食店や物販店の会計と聞くと、「確定申告」「決算書」「税金」といった言葉を思い浮かべる方が多いと思います。これらは主に「財務会計」の領域です。財務会計は、税務署や金融機関などの社外の相手に対して、決算書という形で経営成績や財政状態を報告するための会計で、ルールや形式が法律や会計基準で決められています。
一方、日々の営業のなかで判断したいことは、「この価格設定で利益は出ているのか」「このメニューを増やすべきか減らすべきか」「スタッフの人件費は売上に対して適正か」といった、現場に近いテーマが多いはずです。こうした判断材料となる数字を整理するのが「管理会計」です。管理会計は、店長やオーナーなど内部の意思決定者が使うための会計で、形式やルールは原則自由です。
このように、「財務会計は社外向け」「管理会計は社内向け」という役割の違いを押さえておくと、「どの会計情報を、何のために使うのか」が見えやすくなります。なお、財務会計は法律や会計基準に基づき実施が求められる一方で、管理会計は法的な義務はなく、各店舗・企業が自分たちの判断でやり方や範囲を決めていく会計です。税務署への申告や融資の際には財務会計の結果である決算書が必要になりますが、日々の営業を改善していくには、管理会計の考え方が欠かせません。
財務会計は、損益計算書や貸借対照表といった決算書を作成し、外部に対して「このお店は今こういう状態です」と説明するための“共通言語”です。数字の計算方法や表示の仕方は、税法や会計基準に沿って行う必要があり、どの事業者も基本的には同じルールで作られます。
一方の管理会計は、「自店の状況をオーナーやスタッフが理解し、改善のためのアクションを決めるための数字」です。たとえば「ランチタイムの平均客単価」「メニュー別の粗利額」「テイクアウト比率」など、自店の戦略や課題に関係する数字を自由に選び、見える化していきます。法律で形式が決まっていないため、エクセルの表やPOSレジのレポートをそのまま使う形でも問題ありません。
店舗経営で、財務会計と管理会計それぞれについて最低限チェックしておきたいポイントを整理すると、次のようになります。
【財務会計で押さえておきたいこと】
【管理会計で押さえておきたいこと】
このレベルでも、まったく数字を見ていない状態と比べると、経営の見通しは大きく変わってきます。

「お客様は入っているし、売上もそこそこあるのに、なぜか手元にお金が残らない」。開業して数カ月から1年ほど経ったタイミングで、このような悩みに直面する店舗は少なくありません。忙しい日が多いと、「今日はよく売れたから大丈夫」と感覚的に安心してしまいがちですが、原価や人件費、家賃など固定費まで含めて見ると、思ったほど利益が出ていないケースがあります。
管理会計を取り入れることの一番の意味は、この「なんとなく大丈夫そう」を数字で裏付けし、「どこで利益が生まれ、どこで消えているのか」を見える化することにあります。客単価や原価率、損益分岐点といった指標を押さえておくことで、「今の売上規模で家賃と人件費は適切か」「どの程度まで値上げしても大丈夫か」といった判断がしやすくなります。
お金が残らない主な原因としては、次のようなものが考えられます。
これらは、感覚だけでは気づきにくい部分です。メニュー別の原価率や時間帯別の売上・客数を数字で見てはじめて、「このメニューは人気だけれど利益が薄い」「この時間帯は人を減らしても良さそうだ」といった具体的な改善ポイントが見えてきます。管理会計は、こうした気付きのきっかけをつくる役割を担います。
飲食店や小売店の現場では、オーナーの勘や経験が大きな武器になります。しかし、原価高騰や人件費の上昇、消費者のニーズの変化など、環境が大きく動く中では、勘や経験だけに頼るのはリスクもあります。
管理会計は、勘を否定するものではなく、「勘と数字を組み合わせて判断するための仕組み」です。感覚的に「最近このメニューがよく出ている」と感じたときに、売上データや粗利額を確認して裏付けをとる。値上げを検討する際に、「どこまでなら原価率と利益のバランスが保てるか」を数字で確認する。そうした小さな積み重ねが、結果として大きな損失を防ぎ、利益を守ることにつながっていきます。

管理会計を導入するといっても、特別なシステムをすぐに入れたり、難しい分析手法を覚えたりする必要はありません。飲食店や小売店であれば、次の3つのステップから始めるのがおすすめです。
最初の一歩は、1カ月単位で「売上」「原価」「固定費」を把握することです。
「売上 − 原価 − 固定費」で、大まかな月次の利益が分かります。はじめから細かく正確な数字を求めすぎると続かなくなるので、「多少ざっくりでもよいので、毎月同じタイミングで数字を出す」ことを重視するのがおすすめです。3カ月、半年と続けるうちに、自店の「だいたいの利益水準」が見えてきて、「今月は原価が重かった」「人件費がかさんでいる」といった変化にも気づきやすくなります。
次に、POSレジや会計ソフトのレポート機能を活用して、管理会計に必要な情報を取り出していきます。最近のクラウド型ツールであれば、多くの場合、次のようなレポートが標準で用意されています。
これらの数字を眺めるだけでなく、具体的な問いを持って見ると管理会計として活きてきます。
すべてを一度に分析する必要はありません。月ごとにテーマを一つ決めて数字を見るだけでも、気付けることは増えていきます。
飲食店や小売店で特に押さえておきたい管理会計の指標として、次の3つがあります。
これらを月次で追いかけるだけでも、「客単価をどこまで上げる必要があるか」「原価率が高くなりすぎていないか」「今の売上は損益分岐点をどれだけ上回っているか」といった視点が持てるようになります。最初はざっくりした計算でも構いませんので、まずは自店の数字を一度出してみることから始めてみましょう。

管理会計は、始めることよりも「続けること」が難しいと言われます。開業後は、仕込みや接客、スタッフ対応で毎日があっという間に過ぎていき、数字の確認はどうしても後回しになりがちです。無理なく続けるためのポイントは、「最初から完璧を目指さないこと」と「人とツールに任せる部分を明確にすること」です。
管理会計の本やセミナーでは、さまざまな指標や分析手法が紹介されますが、すべてを一度に取り入れる必要はありません。やりすぎると、かえって途中で手が止まりやすくなります。
おすすめは、次のようなシンプルなルールづくりです。
何をどこまでやるかを絞ることで、管理会計が「続けられる習慣」に変わっていきます。
管理会計だからといって、すべてを自分でやらなければならないわけではありません。会計ソフトやPOSレジが得意なのは、「データを集計し、一覧やグラフにすること」です。また、税理士や会計事務所は数字のプロとして、「数字の読み方」や「改善のためのヒント」を示してくれます。
このように役割分担をすることで、オーナーは「数字をどう活かすか」という本来の経営判断に集中しやすくなります。

管理会計を続けやすくするには、「数字が自動でたまり、あとから振り返りやすい状態」をつくっておくことが大切です。飲食店や小売店の場合、日々の売上やメニュー別のデータはPOSレジに、仕訳や経費などの情報は会計ソフトに集まります。この2つが連携していると、日常のレジ操作や経理作業の延長で、管理会計に必要な数字が自然と揃っていきます。
管理会計のために特別なシステムを一から用意する必要はありませんが、POSレジや会計ソフトを選ぶときに次のようなポイントを見ておくと、後から「数字の見える化」がしやすくなります。
こうした機能があれば、
という役割分担がしやすくなり、オーナーや店長は「数字をどう読むか」「どう経営判断につなげるか」に時間を使えるようになります。
CASHIERは、クラウド型のマルチチャネルPOSシステムとして、管理画面から商品別・時間帯別の売上を一覧やグラフで確認できる仕組みを備えています。たとえば、
といった情報を、紙で集計しなくても画面上で把握できるため、「どの時間帯に人件費をかけるべきか」「どのメニューの価格や原価を見直すべきか」といった管理会計の検討にそのまま使うことができます。
さらに、CASHIERはクラウド会計ソフトのfreee会計と連携することができます。連携設定を行うと、CASHIERで集計した1日の売上データが店舗や販売チャネルごとにまとめられ、日次でfreee会計の取引として自動登録されます。これにより、レジ締め後に売上金額を手入力したり、別システムに転記したりする負担を減らすことができます。
財務会計の観点では、freee会計側で決算や申告に向けた処理が進めやすくなり、管理会計の観点では、CASHIER側の売上データやグラフを見ながら、「どこで利益が生まれているか」「どこにコストがかかっているか」を検討しやすくなります。こうしたツールを組み合わせておくと、日々の仕込みや接客に時間を使いながらも、「数字は自動でたまる仕組み」を土台にして、月に一度落ち着いて管理会計の視点で振り返る、という運用がしやすくなります。

この記事では、管理会計と財務会計の違いと、飲食店や小売店における管理会計の導入ポイントについて解説しました。財務会計が社外への報告のための会計であるのに対し、管理会計は自店の経営判断のために数字を整理する会計です。
まずは月次で「売上・原価・固定費」の3つを押さえ、客単価や原価率、損益分岐点といった基本指標を確認することから始めてみてください。そのうえで、POSレジや会計ソフトのレポートから、メニュー別・時間帯別の数字を見ていくと、「どこで利益が生まれ、どこで削られているのか」がより具体的に見えてきます。
次のアクションとしては、まだツールを導入していない場合は、売上データをしっかり残せるPOSレジや会計ソフトを検討すること。すでに導入している場合は、「どのレポートを管理会計に活かすか」を決め、月1回の振り返りを習慣化することがおすすめです。
CASHIERのようなクラウド型POSレジをfreee会計と組み合わせて活用すれば、日々の会計処理と同時に、管理会計に必要な売上データも自動で蓄積されていきます。数字に強いお店づくりに向けて、自店の規模や状況に合った管理会計の一歩を、ぜひ今日から踏み出してみてください。