「モバイルオーダーを導入したいけれど、初期費用がネック…」そんな悩みを持つ飲食店経営者の方も多いのではないでしょうか。モバイルオーダーシステムの導入には、補助金・助成金を活用できるケースがあり、導入コストを大きく抑えられます。
しかし、申請には条件があり、スケジュールも限られているため、正しい知識と事前の準備が欠かせません。
本記事では、モバイルオーダー導入時に使える補助金の概要や利用時の注意点を解説します。モバイルオーダーシステムの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
【今回のコラムをざっくりまとめると…】
この記事では、モバイルオーダーシステムの導入に使える補助金や助成金制度について紹介しています。補助金・助成金を活用することで、システムの導入費用を大幅に抑えることが可能です。ただし、申請には条件や審査があり、必ず支給されるわけではありません。自店舗に合った制度を見極めて活用することが大切です。
補助金制度とは、国や自治体が特定の事業に対して支給するお金のことです。補助金の目的は、事業者の取り組みを支援し、経済的な活動を促すことにあります。融資とは違い、あとで返す必要がありません。
モバイルオーダーを導入する場合、システムの導入費用の一部を助成するため、店舗の負担を軽減できるのが大きなメリットです。モバイルオーダーだけでなく、POSレジや券売機、キャッシュレス決済端末などの導入にも利用できます。
ただし、補助金には申請期間や要件があるため、事前に制度内容をよく確認し、スケジュールに余裕をもって準備することが重要です。補助金により、システムの導入費用を大幅に抑えられるので、自店舗に合う制度を見極めながら積極的に活用していきましょう。
モバイルオーダーシステムの導入で利用できる補助金は以下のとおりです。
それぞれ解説します。
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者などがITツールを導入する際に利用できる支援制度です。モバイルオーダーシステムなどのITツールを使って業務の効率化や売上アップを図る際に、その費用の一部を負担してくれます。
申請条件は、以下の業務プロセスから1種類以上のソフトウェアを申請することです。
補助額は、導入するITツールの内容により異なり、1プロセス以上は最大150万円、4プロセス以上で最大450万円まで支援されます。補助率は通常1/2ですが、最低賃金近傍の事業者※1に対しては2/3まで引き上げられるのが特徴です。
ただし、ソフトとハードウェアの両方を導入する必要があります。たとえば、タブレットのみの導入に対しては補助対象にはならないため注意が必要です。
項目 | 内容 |
補助率 | 通常:1/2以内、条件を満たすと:2/3以内 |
補助額 | ・1プロセス以上:5万~150万円 ・4プロセス以上:150万~450万円 |
対象ツール | ITツール導入関連費用 |
申請スケジュール | ・第3次締切:2025年7月18日(金)17:00、交付決定:2025年9月2日(火)予定 ・第4次締切:2025年8月20日(水)17:00、交付決定:2025年9月30日(火)予定 |
申請に際してサポートが必要な場合は、IT導入支援事業者に依頼することも可能です。詳しくは公式サイトの最新情報をご確認ください。
出典:IT導入補助金
※1 3カ月以上地域別最低賃⾦+50円以内で雇⽤している従業員数が全従業員数の30%以上であること
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の経営をサポートするための制度です。販路の開拓や業務の効率化、従業員の賃上げ、インボイス制度への対応といった取り組みに対して、かかった費用の一部を補助してくれます。
小規模事業者持続化補助金の補助額は最大200万円です。補助率は3分の2ですが、赤字の事業者であれば4分の3まで引き上げられます。
補助金の対象は、常時雇用の従業員が5人以下の事業者などです。また、インボイス制度に対応するために、免税事業者から適格請求書発行事業者へと転換した場合は、補助額に一律50万円が上乗せされる特例も用意されています。
項目 | 内容 |
補助率 | 通常:2/3、赤字事業者:3/4 |
補助額 | 最大200万円 |
対象ツール | 機械装置等費 (ITツール導入関連費用) |
申請スケジュール | 未定 |
なお、申請の受付期間が短いため、利用する際は事前に準備を進めておくことが重要です。詳しくは公式サイトの最新情報をご確認ください。
出典:小規模事業者持続化補助金
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者が新しい製品やサービスを開発する際に活用できる補助制度です。革新的な技術や仕組みを導入するための設備投資やシステム構築に対して、費用の一部が補助されます。
補助額・補助率は事業規模に応じて異なり、小規模事業者は最大で補助率2/3、中小企業は1/2の支援を受けられます。支給額は最低750万円から最大2,500万円までです。
対象となる経費は、機械装置やシステムの構築費、原材料費、技術導入費など幅広く、設備投資額が50万円(税抜)以上であることが条件です。ただし、審査に通過しなければ支給されず、条件を満たさなかった場合は返還義務が発生することもあります。
また、すでに広く普及している製品やサービスを導入する場合は対象外となるため、自社の取り組みが「革新的」であるかが重視される補助金です。詳しくは公式サイトの最新情報をご確認ください。
項目 | 内容 |
補助率 | 中小企業:1/2 小規模事業者:2/3 |
上限補助額(従業員別) | ・5人以下:750万円 ・6~20人:1,000万円 ・21~50人:1,250万円 ・51人以上:最大2,500万円 |
対象経費 | 機械装置費、システム構築費、技術導入費、原材料費など |
申請スケジュール | 電子申請受付:2025年7月1日(火)17:00~ 申請締切:2025年7月25日(金)17:00 |
出典:ものづくり補助金
働き方改革推進支援助成金は、事業における「労働時間の短縮」や「生産性の向上」に取り組む際に活用できる助成制度です。取り組み内容によって、以下4つのコースから選ぶことができます。
いずれのコースも成果目標があり、目標を達成することで助成金を受け取れる仕組みです。たとえば、社員の残業時間を減らす取り組みや、有給休暇を計画的に取れるよう制度を整備することで、助成金の対象となります。
さらに、従業員の賃金を3〜5%以上引き上げた場合には、支給額が加算され、最大480万円まで受給可能です。令和7年度からは新たに「賃上げ加算枠」も設けられており、7%以上の賃上げで最大720万円の加算も見込めます。
労働者数が30人超の場合
賃上げ人数 | 3%以上の賃上げ | 5%以上の賃上げ | 7%以上の賃上げ(令和7年度から) |
1~3人 | 15万円 | 24万円 | 36万円 |
4~6人 | 30万円 | 48万円 | 72万円 |
7~10人 | 50万円 | 80万円 | 120万円 |
11~30人 | 1人あたり5万円(上限150万円) | 1人あたり8万円(上限240万円) | 1人あたり12万円(上限360万円) |
労働者数30人以下の場合
賃上げ人数 | 3%以上の賃上げ | 5%以上の賃上げ | 7%以上の賃上げ(令和7年度から) |
1~3人 | 30万円 | 48万円 | 72万円 |
4~6人 | 60万円 | 96万円 | 144万円 |
7~10人 | 100万円 | 160万円 | 240万円 |
11~30人 | 1人あたり10万円(上限300万円) | 1人あたり16万円(上限480万円) | 1人あたり24万円(上限720万円) |
令和7年度の働き方改革推進支援助成金の交付申請は、2025年4月1日から受付が始まっています。申請の締切は2025年11月28日までです。
予算の上限に達した場合は、締切日前に受付が終了する可能性もあるため、できるだけ早めに準備を進めることをおすすめします。
出典:働き方改革推進支援助成金
業務改善助成金は、企業の生産性向上を目的とした設備投資に利用できる補助金制度です。「事業場内の最低賃金を30円以上引き上げること」が申請の条件となります。
つまり、従業員の給与を上げる代わりに、業務効率化につながる設備導入費用を国が一部支援してくれる仕組みです。
助成額は60万〜600万円で、引き上げる賃金額に応じて金額が増加します。助成率は1,000円未満が4/5、1,000円以上で3/4です。
コース区分 | 事業場内最低賃金の引き上げ額 | 引き上げる労働者数 | 助成上限額 右記以外の事業者 | 助成上限額 事業場規模30人未満の事業者 |
30円コース | 30円以上 | 1人 | 30万円 | 60万円 |
2~3人 | 50万円 | 90万円 | ||
4~6人 | 70万円 | 100万円 | ||
7人以上 | 100万円 | 120万円 | ||
10人以上 | 120万円 | 130万円 | ||
45円コース | 45円以上 | 1人 | 45万円 | 80万円 |
2~3人 | 70万円 | 110万円 | ||
4~6人 | 100万円 | 140万円 | ||
7人以上 | 150万円 | 160万円 | ||
10人以上 | 180万円 | 180万円 | ||
60円コース | 60円以上 | 1人 | 60万円 | 110万円 |
2~3人 | 90万円 | 160万円 | ||
4~6人 | 150万円 | 190万円 | ||
7人以上 | 230万円 | 230万円 | ||
10人以上 | 300万円 | 300万円 | ||
90円コース | 90円以上 | 1人 | 90万円 | 170万円 |
2~3人 | 150万円 | 240万円 | ||
4~6人 | 270万円 | 290万円 | ||
7人以上 | 450万円 | 450万円 | ||
10人以上 | 600万円 | 600万円 |
ただし、申請期間は比較的短いため、タイミングを逃さず早めに準備を進めることが大切です。導入したい設備がある場合は、賃上げとあわせて前向きに検討してみるとよいでしょう。
詳しくは公式サイトの最新情報をご確認ください。
出典:業務改善助成金
モバイルオーダーの導入を検討しているなら、国の制度だけでなく、市区町村など地域ごとの補助金や助成金も確認しておきましょう。地域ごとに、独自の支援制度が用意されていることがあります。
東京都の例では、「令和7年度中小企業デジタルツール導入促進支援事業」がおすすめです。補助額は最大100万円、助成対象経費の2分の1以内(小規模企業者は3分の2以内)で提供されています。対象となるのは、クラウド型会計ソフト、業務自動化ツール費などです。
項目 | 内容 |
対象 | 都内中小企業者等(会社・個人事業主・中小企業団体) |
助成限度額 | 最大100万円 (申請できる助成金の下限額5万円) |
助成率 | 助成対象経費の2分の1以内(小規模企業者は3分の2以内) |
助成対象期間 | 2年間 |
助成対象経費の例 | 新たに導入するクラウド型会計ソフト、業務自動化ツールなど |
申請期間 | 6月募集:2025年6月11日~7月4日 10月募集(予定):2025年10月 |
地域によって対象経費や補助率も異なるため、まずは自分の店舗がある自治体のホームページなどで確認してみてください。予算が埋まり次第終了する制度もあるので、気になるものがあれば早めの申請が大切です。
モバイルオーダーの導入費用は、導入するシステムの種類や規模によって異なりますが、一般的には10万円〜20万円程度です。比較的手の届きやすい価格帯のため、小規模な飲食店や個人経営のお店でも導入しやすくなっています。
また、ランニングコストも考慮しなければなりません。ランニングコストには、システム利用料や決済手数料、サポート費用などが発生します。
項目 | 費用相場 |
初期費用(販売管理システム、POSレジ、プリンター、ルーターなど) | 10万円~20万円 |
ランニングコスト(システム利用料や決済手数料、サポート費用) | 1万円~3万円 |
さらに、インターネット環境の整備が必須となるため、Wi-Fi設備がない場合は別途コストがかかります。
とはいえ、他のセルフオーダーシステムに比べると価格が手頃なので、小規模店舗や個人経営のお店でも導入しやすいのが魅力です。初期費用をさらに抑えたい方は、本記事で紹介している補助金の活用もぜひ検討してみてください。
補助金を利用する際は、以下の点に注意しましょう。
それぞれ解説します。
モバイルオーダーに利用できる補助金は、誰でも・いつでも使えるわけではありません。対象となるツールや設備、要件はあらかじめ決まっているため、まずはその要件をしっかり確認することが大切です。
また、補助金や助成金には申請できる期間が決められており、タイミングを逃すと利用できなくなります。
補助金の利用を検討する際は、
などを細かく確認することが重要です。年に数回の公募がある場合でも、予算が上限に達した時点で早期終了するケースもあるので注意しましょう。
補助金は申請すれば必ず支給されるものではありません。審査に通った場合にだけ支給される制度です。審査に通過できない場合があるため、補助金ありきで設備を導入してしまうのはリスクがあります。
実際、申請書類に不備や漏れがあると、それだけで審査に落ちてしまうケースも少なくありません。特に初めて申請する方は、「これで大丈夫だろう」と自己判断で進めてしまい、あとでミスが見つかることもよくあります。
補助金申請で不安がある場合は、有料のサポートサービスを利用するのもひとつの手です。
補助金や助成金は、先にお金をもらえる制度ではありません。「設備やシステムを導入したあとに、その費用の一部が支給される」という後払いの仕組みになっています。つまり、最初に必要な費用はすべて自分で用意しなければなりません。
モバイルオーダーシステムの導入に数十万円かかる場合は、その分を一度立て替える必要があります。補助金をあてにして導入したものの、後から「審査に通らなかった」という可能性があるため注意が必要です。
そのため、補助金の活用を前提に高額な設備投資をするのではなく、必要なモバイルオーダーシステムを慎重に選定することが大切です。「最悪、補助金が出なかったとしても問題なく運用できる」という視点で、導入を検討しましょう。
モバイルオーダーシステムは、業務効率化や人手不足の解消に役立つ一方で、費用がネックで導入を躊躇する事業者も多いです。補助金や助成金を活用すれば、システム導入の費用を大幅に抑えることができます。
モバイルオーダーシステムに利用できる補助金・助成金は以下のとおりです。
これらの補助金には対象条件や申請期間、申請要件があり、必ず支給されるとは限りません。また、後払いとなるため、先に費用負担が生じる点に注意し、支払い計画を立てることが大切です。
CASHIERのモバイルオーダーシステムは、補助金や助成金利用のサポートも行っています。ぜひ一度公式ホームページよりご相談ください。