さまざまな注文方法が登場する中、特に飲食業界で注目を集めているのがモバイルオーダーです。テイクアウトを中心としたお店はもちろん、店内飲食を前提として店舗でも導入が進んでいます。
そこで今回は、モバイルオーダーの基本的な概要や使い方、導入のメリット、注意点、実際の導入事例などを解説します。
テイクアウトやデリバリー、店内飲食などで見かける機会の増えたモバイルオーダー。ここでは、モバイルオーダーの概要や種類、使い方について解説します。
モバイルオーダーとは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を使って商品を注文し、オンライン決済するシステムのことです。
モバイルオーダーを利用した場合、お客様はモバイル端末の専用アプリでモバイルオーダー会員登録を済ませ、注文と支払いを事前に行います。その後、飲食店でサービスを受ける、という流れになります。
最近では、大手飲食チェーンから個人の飲食店まで幅広い企業に導入が進められています。
モバイルオーダーが普及した背景には、以下の3つの要因が考えられます。
l 人材不足解消のための店舗運営の効率化
少子高齢化により、サービス業における人材不足は深刻化しています。そのため、店舗運営を効率化し、少ない人員での運営を可能にする必要があるため、モバイルオーダーの普及につながりました。
l 新しい購買体験の提供による顧客満足度の向上
IT技術の進化により、日々、消費者は利便性を求める傾向が強くなっています。「テイクアウトする際の待ち時間を減らしたい」「混雑していてもじっくり商品を選びたい」「モバイルオーダーで購入するとポイントが加算される」といった新しい顧客ニーズに応えるため、モバイルオーダーが普及しています。
l 新型コロナウイルスの流行によるテイクアウト需要への対応
新型コロナウイルスの流行により、飲食店においてテイクアウト需要が高まりました。できる限り密集しないよう、待ち時間を減らす必要があったため、モバイルオーダーが普及したのです。
こうした要因により、今ではモバイルオーダーを利用した購買体験は非日常から日常的な体験になるまでに普及しつつあります。
モバイルオーダーの種類は、主に以下の2つに分けられます。
l テイクアウト用(持ち帰り)
l イートイン用(店内席での提供)
テイクアウト用は、来店前に顧客がモバイル端末で注文と決済を行い、店頭で商品を受け取るタイプです。大手飲食チェーンでは、専用アプリを用意するケースが増えています。
イートイン用は、店内の各座席にQRコードなどが設置されており、顧客が自身の端末でそれを読み取った上で注文を行うタイプです。店舗側が専用端末を用意するケースもあります。
テイクアウト用のモバイルオーダーを例に、お客様の使い方を以下で簡単にご紹介します。基本的にテイクアウト用のモバイルオーダーでは、システム上で事前決済まで行われるため、店舗は商品を準備してお客様に手渡すだけで業務が完了します。
時間指定できる場合には、お客様は以下の手順で商品を注文・支払いを行います。
1. 専用アプリやWebサイトにアクセスする
2. 注文する商品・希望の受取り時間帯を選択する
3. 注文内容を確定し、支払いを行う
4. 指定の時間に受け取りに行く
ただし、注文が立てこんでいる場合には、受取り時間が表示されないように設定されている企業もあります。時間指定できるようにする場合には、混雑時の対応についても合わせて対応することが必要です。
時間指定できない場合には、お客様は以下の手順で商品を注文・支払いを行います。
1. 専用アプリやWebサイトにアクセスする
2. 注文する商品を選択する
3. 注文内容を確定し、支払いを行う
4. 企業ごとに設定されている受取り目安時間に受け取りに行く
お客様の利便性を優先するなら時間設定できる方が良いですが、食品安全性の観点から時間指定できない仕様にしている企業もあります。自社の方針をしっかり確立してからモバイルオーダーを導入しましょう。
モバイルオーダーの導入が進んでいるのは、店舗運営にさまざまな効果をもたらすためです。ここではモバイルオーダーの導入がもたらすメリットを解説します。
モバイルオーダーを導入すると、レジ前や各テーブルでの応対時間を減らせるため、業務の効率化につながります。
人手不足やレジ周辺の混雑に悩まされている店舗で高い効果を発揮するでしょう。またお客様にとっても、レジ前やテーブルで待たされるケースが減り、スムーズに注文を終えられるうえ、感染症対策になるのもメリットです。
モバイルオーダーを導入した店舗では、対面での注文確認やレジでの決済対応がなくなるため、スタッフの負担軽減が期待できます。
レジ打ちや接客が苦手な方でも仕事をしやすくなり、アルバイトやパートの早期戦力化にも役立ちます。
モバイルオーダーシステムはPOSレジと連携して使用するケースが多いため、注文を受けるだけで自動的に顧客データや売上を管理できます。
収集した顧客情報をメニュー開発やサービスの提供に活用すれば、顧客満足度の向上も見込めます。
テイクアウト型のモバイルオーダーを利用する場合、支払い方法はキャッシュレス決済を使用するのが一般的です。そのため、システムを導入すると自動的にキャッシュレス決済にも対応でき、幅広いお客様に利用してもらいやすくなります。
一般的なメニュー表では、かさばるのを防ぐためにおすすめの料理にのみ絵や写真を使用し、多くの料理が文字と価格だけで表記されています。
一方モバイルオーダーの場合、紙のように管理が煩雑になる心配がないため、すべての料理に写真を載せられます。料理をより魅力的に見せることができ、お客様に「注文してみたい」と思ってもらいやすくなるでしょう。
また、メニューの変更もシステム上で行えるため、新商品を一つ追加するのにメニュー表を印刷し直す必要がなくなります。既存のメニュー表を撮影し、システム上に取り込めるサービスもあります。
このように、モバイルオーダーの導入は店舗と顧客の双方にメリットがあります。
モバイルオーダーの導入には懸念点もあります。
そこで次は、モバイルオーダーの導入における企業側の注意点を解説します。
外部のモバイルオーダーシステムを利用する場合、導入費用やプランに応じた月額利用料、決済手数料などがかかります。これらのコストは定額で発生するため、モバイルオーダーを利用する顧客がいなくても支払う必要があります。
業務効率化で削減できる人件費とモバイルオーダーの導入費用を比較し、十分な効果が見込めるか検討することが重要です。
また、初期費用がかからないサービスや無料トライアルのあるサービスを活用するのも良いでしょう。
モバイルオーダーの導入によって料理の提供方法が大きく変わるため、新たにオペレーション研修を行う必要があります。
モバイルオーダーの注文を管理する機器を新たに設置する場合は、その操作方法なども覚えなければなりません。
テイクアウトタイプのモバイルオーダーシステムは、多くがキャッシュレス決済の使用を前提としています。
そのため、クレジットカードを持っていない方やスマホ決済を利用しない方からは敬遠される可能性があります。事前に店舗の顧客層を確認し、利用客が限定されて売上に影響がないか検討することが大切です。
モバイルオーダーはインターネット通信を前提としたシステムのため、大規模な通信障害などが発生すると使用できなくなる可能性があります。また、システム自体の不具合の発生も否定できません。不具合が起きた場合は、通常の接客スタイルに切り替えるなど対策が必要です。
モバイルオーダーを導入する際は、上記の点に気をつけましょう。
モバイルオーダーは、飲食店を中心にさまざまな店舗で普及しています。ここでは、モバイルオーダーを導入している大手のチェーン店をご紹介します。
ハンバーガーショップのマクドナルドでは、専用アプリを使ったモバイルオーダーを導入しています。
マクドナルド公式アプリにアクセスしてお店と商品を選び、受け取り方法と決済方法を選択したら、店舗に向かい商品を受け取ります。持ち帰りだけでなく、店舗内のテーブルや駐車場の車まで商品を届けてもらうことも可能です。クーポンも使用できるため、お得に食事を楽しむことができるでしょう。
コーヒーショップのスターバックスでは、アプリやWebから商品を注文できるモバイルオーダーが導入されています。
事前に商品を注文し決済を済ませておけば、レジに並ぶことなくカウンターで商品を受け取れる仕組みです。
商品のカスタマイズも店頭と同様に細かく行えるため、モバイルオーダーでもいつもの味を楽しむことができます。また、希望する場合は店舗へ入店せず、ドライブスルーで商品を受け取ることも可能です。
ミスタードーナツでは、Webサイト上から商品を注文し、テイクアウトすることができます。
Webサイトにアクセスして受け取り店舗と時間を指定し商品を選んだら、お客様情報を入力して決済を行う流れです。ショップによって取り扱いは異なるものの、おなじみの商品がラインナップされています。
ケンタッキーでは、オンラインで注文が可能なネットオーダーシステムを採用しています。お持ち帰り予約とお届け注文に利用でき、公式アプリと連携させることでチキンマイルが貯まる仕組みです。ネットオーダー限定の商品が販売されることもあるようです。
モバイルオーダーは、人手不足や非接触需要の拡大、キャッシュレス決済への対応など近年飲食店が抱える問題をまとめて解決できるシステムです。
メリットや注意点を理解した上で、導入を検討してみてはいかがでしょうか。