
開業/店舗経営 居酒屋を開業したい。
そう決意して行動を始めたものの、「やることが多すぎて、どこから手をつければいいのか分からない」という声は少なくありません。
資金計画、資格や許可の取得、物件選び、そして開店後の集客。どれも欠かせない要素ですが、順序を誤ると開業後に思わぬトラブルや資金難を招くこともあります。
居酒屋を開業する際に大切なのは、「思いつきではなく、流れで考える」ことです。
準備には平均で3〜6か月ほどかかり、大きく分けると以下の5ステップで進みます。
どれも欠かせませんが、順番を整理することで「今、何を優先すべきか」が明確になります。
たとえば、資金計画を立ててから物件探しを行うことで、無理のない家賃範囲を設定できますし、資格の取得スケジュールを早めに組めば、オープン直前に慌てる心配もなくなります。
開業準備は積み上げ式。ひとつの段階を丁寧にこなすことで、次のステップがスムーズに進み、結果的にコストと時間の無駄を減らせます。
この記事では、この中でも特に重要な「資金計画」「物件選定」「資格」「集客準備」に焦点をあてて詳しく見ていきましょう。
【今回のコラムをざっくりまとめると…】
この記事では、これから居酒屋を開く方に向けて、開業までの手順・必要な資格・費用の目安・集客準備のポイントをわかりやすく整理しました。 全体の流れをつかむことで、今やるべき準備が明確になり、開店までのスケジュールを逆算しやすくなります。
居酒屋を始めるうえで、最初に着手すべきは資金計画と事業計画です。 この段階を明確にしておくと、物件選び・メニュー設計・人件費など、すべての判断が数字で裏づけられるようになります。 特に、想定よりも初期費用や運転資金が膨らむケースが多いため、資金計画は余裕を持って設定することが大切です。
居抜き物件を利用したとしても、居酒屋開業には平均700万〜1,000万円前後の資金が必要です。
費用の内訳は、内装・厨房機器に約半分、残りを保証金・仕入れ・人件費・広告費などが占めます。
さらに、開業後の運転資金を6か月分確保しておくと安心です。
運転資金を切らすと黒字化前に経営が立ち行かなくなるため、「開業費+半年の運転資金」を基本ラインとして計画を立てましょう。
最近は人件費や光熱費の高騰も進んでおり、開業後は月次で損益を確認し、必要に応じて資金計画を見直すための運用サイクルを回すことが成功の鍵となります。
開業後は月次で損益を確認し、必要に応じて資金計画を見直すために運用サイクルを回すことが成功の鍵となります。
自己資金が足りない場合は、日本政策金融公庫の創業融資制度が有力な選択肢です。
開業前から相談でき、無担保・無保証で借りられるケースもあります。
必要なのは、資金計画書と事業計画書。売上・原価・人件費を具体的に見積もり、「返済できる根拠」を数字で示すことが重要です。
融資を申し込む際は「自己資金:借入金=3:7」程度が目安。
たとえば、開業費800万円を想定する場合、自己資金240万円・借入560万円の構成が妥当です。
審査時には飲食業での勤務経験や店舗運営への理解も重視されます。
申込から着金まで1〜2か月かかることもあるため、物件契約や内装着工の前に資金手当の目処を立てておくと安全です。
銀行系融資を検討する場合も、時間に余裕を持ちましょう。
この3点を整理すれば、融資審査はもちろん、開業準備全体の方針も明確になります。
開業後は毎月の実績で計画との差を検証し、対策を反映する運用を徹底しましょう。
理想の居酒屋づくりに欠かせないのが、立地と物件の選定です。 「駅チカで人通りが多い」「住宅街で常連が付きやすい」など、 どんな客層を狙うかによって最適な物件は異なります。 開業に失敗するケースの多くは、「家賃と売上のバランス」を見誤ること。 まずは、事業計画の想定売上から逆算し、無理のない範囲で物件を探しましょう。 目安としては、家賃は月商の10〜15%以内に収めるのが理想です。 また、契約前には必ず周辺環境を確認し、夜間の人通りや競合店舗の有無を調べておくと安心です。
店舗を新たに構える場合、大きく分けて「居抜き物件」と「新装物件」の2つの選択肢があります。 居抜き物件は、前テナントの内装や厨房機器をそのまま引き継げるため、初期費用を大幅に抑えられるのが魅力です。 一方で、前店の設備が老朽化している場合や、間取りがコンセプトに合わない場合は、改修コストがかさむこともあります。 新装物件は自由度が高く、自分の理想に合わせて一から店舗を設計できます。 ただし、内装工事や設備導入の費用が高額になりやすく、開業コストが居抜きの約1.5〜2倍に達するケースもあります。 資金と理想のバランスを見極め、無理のない範囲で選択しましょう。 最近では「居抜き情報.com」や「店舗そのままオークション」など、 飲食店専門の物件サイトを活用すると、相場や条件を比較しやすくなります。
契約前に図面を保健所へ相談し、営業許可の条件を満たすかを確認しておくと、後の手戻りを防げます。 物件は出会いとも言われますが、焦って契約せず、数字と条件で冷静に判断することが成功への近道です。
居酒屋を開業するためには、複数の資格や行政手続きが必要です。 これらは開業直前にまとめて申請というわけにはいかず、申請順序や期間を逆算して準備することが大切です。 地域によって提出先や必要書類が異なる場合もあるため、開業予定エリアの自治体に早めに確認しておきましょう。
飲食店を営業するには、最低限食品衛生責任者の資格と飲食店営業許可が必要です。 食品衛生責任者は自治体の講習(1日)で取得でき、費用は1万円前後。 自治体により費用や開催頻度が異なるため、公式サイトで確認を。 営業許可は保健所に申請しますが、内装工事の前に図面を確認してもらうとスムーズです。 設備条件を満たしていない場合、検査で不合格になることもあるため、工事前の図面相談を必ず行いましょう。
収容人数30人以上の店舗では防火管理者の選任が義務付けられています。
消防署で1〜2日間の講習を受け、修了証を取得しましょう。
また、深夜0時以降に酒類を提供する場合は、警察署で「深夜酒類提供飲食店営業届」を提出する必要があります。
さらに、店内の照度や客席レイアウトなどにも基準があり、提出書類に誤りがあると再申請になるケースも。
契約前に用途地域や各種制限は、管轄の役所・都市計画課や消防・警察窓口に事前確認しておくと確実です。
スケジュールに余裕を持ち、各機関への確認を前倒しで行うことが、トラブル回避と安心経営への第一歩です。
資金や資格の準備と並行して、集客の仕込みを始めることが、開業成功への分かれ道になります。 開店直前になって宣伝を始めても認知は広がりにくいため、オープンの1〜2か月前から発信を始めるのが理想です。
Instagramで店舗づくりの様子やメニュー開発を発信し、Googleビジネスプロフィールで住所・営業時間を登録しておくと、検索時に見つけられやすくなります。
投稿内容に「地名+居酒屋」「メニュー名」など地域キーワードを入れると、地元検索に強くなります。
リール動画で仕込み風景やスタッフ紹介を発信するのも効果的。オープン前の人柄を見せる投稿は、初来店動機を高めます。
身近な人や地域の方を招いたプレオープンイベントは、宣伝効果が抜群です。
料理のフィードバックも得られるため、正式オープン前に改善のチャンスがあります。
SNS投稿を促すことで、自然な口コミを広げられます。
可能であれば、近隣店舗と連携し「地域クーポン企画」などを行うのもおすすめです。
開業直後は新規よりも「再来店」を重視しましょう。
ポイントカードやLINE公式アカウントを活用し、再来店特典を設けるのも効果的です。
口コミと再訪の循環を作ることで、早期の安定経営につながります。
居酒屋の開業を成功させるために重要なのは、センスや経験よりも準備の順番を間違えないことです。
資金計画で数字を整理し、物件を慎重に選び、必要な資格を確実に取得し、開業前から集客を仕掛ける。
この4つを丁寧に積み上げることで、開店後のリスクを最小限にできます。
また、開業後の運営では「データを活かした経営」も欠かせません。
売上や客単価、時間帯別の来店傾向を分析できるPOSレジ・券売機システム「CASHIER」を導入すれば、現場業務の効率化と経営判断のスピードが大きく向上します。
日々の売上を見える化し、数字をもとにメニューや人員配置を改善することで、安定した店舗運営が実現します。
開業はゴールではなくスタート。準備段階から数字と仕組みを意識し、「計画的に・着実に」、理想の居酒屋づくりを進めていきましょう。