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従業員の退職手続きガイド。必要書類と会社側がやること・流れを解説 開業/店舗経営 店舗運営

従業員の退職手続きガイド。必要書類と会社側がやること・流れを解説

「スタッフが退職することになったけれど、手続きって何からやればいいんだろう?」

「健康保険や雇用保険は、会社がどこまでやるべき?従業員には何を伝える?」

小さな飲食店・小売店・サロンなどでは、退職手続きも店長やオーナーが兼務していることが多く、その場しのぎで「前に使った書類を引っ張り出して、とりあえず同じように対応する」というケースも少なくありません。

ただ、退職の場面では、提出期限が決まっている届出や、会社側に交付義務がある書類も含まれます。曖昧なまま進めてしまうと、退職した従業員の失業給付や保険の切り替えに影響が出てしまうおそれもあります。

この記事では、従業員が退職する際に必要な手続きを、

  • 「会社側がやること」
  • 「従業員本人がやること」

に分けながら、退職前〜退職後の流れに沿って整理していきます。

※本記事は、一般的な正社員・アルバイト・パートの退職を想定した概要です。

加入している健康保険・年金制度、自治体、就業規則、雇用契約(有期・無期)などによって扱いが異なる場合があります。

実際の手続きや判断が難しい場合は、社会保険労務士や所轄の役所・ハローワーク等に必ずご確認ください。

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【今回のコラムをざっくりまとめると…】

この記事では、退職手続きの基本的な流れを「退職の申出 → 引き継ぎ・貸与品の回収 → 各種届出 → 書類の受け取り → 退職後の切り替え」というステップでシンプルに整理します。会社側の手続き期限(社会保険・雇用保険・源泉徴収票など)と、従業員側が退職後の転職有無によって変わる健康保険・年金・失業給付のポイントをわかりやすくまとめ、「退職日をどう決めるか」「社会保険・雇用保険の届出」「源泉徴収票と住民税の扱い」という最低限おさえたい3つの点を中心に解説していきます。

目次
1 従業員の退職手続きの全体像を押さえる 2 【会社側】退職前〜退職日までにやること 2.1 退職の申し出を受け、退職日を決める 2.2 退職願・退職届を受け取り、書面として残す 2.3 引き継ぎと貸与品回収の段取りを決める 3 【会社側】退職後にやること(期限付きの手続き) 3.1 社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失届を出す 3.2 雇用保険の手続きと離職票の準備 3.3 源泉徴収票・住民税など税金まわりを整理する 3.4 退職時によくあるトラブルを事例で見る 4 【従業員側】退職前にやること 4.1 退職の意思表示と退職届の提出 4.2 有給休暇の使い方とシフトの相談 4.3 貸与品と健康保険証の返却準備 5 【従業員側】退職後にやること 5.1 健康保険をどうするか決める 5.2 年金の種別を切り替える 5.3 失業給付を受けるかどうかを考える 6 手続き漏れを防ぐ会社側チェックリスト 6.1 退職前〜退職日まで 6.2 退職後(一定期間内に行うこと) 7 まとめ

従業員の退職手続きの全体像を押さえる

従業員の退職手続きの全体像を押さえる

ここでは、「退職が決まった瞬間から、退職後しばらくの間まで」に、どんな手続きが必要になるのかを俯瞰します。

会社側は、退職願や退職届を受け取り、退職日を確定するところからスタートします。そこから、業務の引き継ぎの段取りを決め、健康保険証や社員証、制服、鍵、PC・タブレットのような貸与品を返却してもらう準備を進めます。

退職後には、健康保険や厚生年金の資格喪失の届出、雇用保険の資格喪失・離職票の手続き、源泉徴収票の作成・交付、住民税の扱いの変更など、いくつかの「期限付きの仕事」も発生します。

一方で従業員側は、退職の意思をいつ・どのように伝えるかを考え、最終出社日や残っている有給休暇の使い方を上長と相談します。退職日までに貸与されていた物を整理し、退職後は、健康保険をどうするか(国保・任意継続・家族の扶養)、年金の種別をどう切り替えるか、失業給付を受けるかどうかといった点を決めていくことになります。

小規模店舗では、正社員・アルバイト・パートが混在していることも多いですが、「退職日の決め方」「貸与品の回収」「社会保険・雇用保険・税金に関する届出」という基本の流れは、どの雇用形態でも大きくは変わりません。

まずは、この全体像を共通イメージとして持っておくと、個別のステップも理解しやすくなります。

【会社側】退職前〜退職日までにやること

【会社側】退職前〜退職日までにやること

ここからは、退職の申し出を受けてから、最終出社日・退職日までに会社が進めておきたいことを順番に見ていきます。

退職の申し出を受け、退職日を決める

最初のポイントは、「いつ退職するのか」をきちんとすり合わせることです。

従業員から退職の申し出があったら、希望している退職日と最終出社日を確認します。同時に、有給休暇の残日数も把握し、「どこまで出勤し、どこから有給にするか」を話し合っておくと、後々のトラブルを防げます。

法律上は、期間の定めのない雇用であれば、退職の申し出から2週間で辞めることができますが、多くの会社では就業規則で「1か月前までに申し出」といったルールを定めています。実務では、店舗の繁忙期や人員体制、引き継ぎに必要な時間も踏まえたうえで、お互いに無理のない退職日を話し合いで決めていくイメージです。

決まった内容は、口頭だけで済ませず、メールや退職届の控えなどで記録に残しておくと安心です。「いつ」「どの条件で」退職するかが後からでも確認できるようにしておきましょう。

退職願・退職届を受け取り、書面として残す

退職の意思表示は口頭でも有効ですが、後になって「言った・言わない」の話になりやすい部分でもあります。そのため一般的には、退職願や退職届を提出してもらい、書面として残す運用をとります。

「退職願」はあくまで「退職したい」という申し出、「退職届」は「退職することの通知」という意味合いが強く、一度提出すると原則として撤回は難しくなります。どちらの形式を採用するかは、就業規則や社内ルールであらかじめ決めておくと、現場で迷わずに済みます。

引き継ぎと貸与品回収の段取りを決める

退職日が見えてきたら、次は引き継ぎの計画を立てます。

その従業員が担当している業務や顧客を洗い出し、誰がどの仕事を引き継ぐのかを決めます。マニュアルや簡易的な引き継ぎメモでも構わないので、「その人しか分からない状態」を減らしておくことが大切です。取引先が多い業態では、後任者の紹介や挨拶のタイミングも決めておくとスムーズです。

同時に、退職時に回収すべき貸与品も一覧にしておきます。健康保険証(扶養家族分を含む)、社員証や名札、制服・エプロン、店舗やバックヤードの鍵、PC・タブレット・スマートフォンなどの端末、会社負担で支給した備品や名刺など、店舗によって項目はさまざまです。書き出したリストをもとに、最終出社日の前後でどのタイミングで回収するかを決めておくと、後日個別に連絡する手間を減らせます。

【会社側】退職後にやること(期限付きの手続き)

【会社側】退職後にやること(期限付きの手続き)

退職日を過ぎると、会社側にはいくつかの「期限付きの手続き」が発生します。ここでは、代表的なものを流れに沿って確認していきます。

社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失届を出す

従業員が退職すると、その翌日からは会社の健康保険・厚生年金の加入資格を失います。

そのため、資格を失った日(退職日の翌日)から5日以内に、健康保険・厚生年金の資格喪失届を提出する必要があります。

この届出には、本⼈や扶養家族の健康保険証を添付することが多いため、退職日までに確実に返却してもらう段取りが重要です。もしどうしても回収できない場合は、「保険証が回収できなかった」という内容の届出が別途必要になるケースもあるため、年金事務所や健康保険組合の案内を確認しておくと安心です。

雇用保険の手続きと離職票の準備

雇用保険に関しては、退職日の翌々日から10日以内を目安に、ハローワークへ資格喪失の届出を行います。失業給付の手続きに使われる離職票が必要な場合は、併せて離職証明書を作成し、提出します。

離職票は、退職した従業員がハローワークで失業給付の手続きをするときに使う大事な書類です。必要かどうかは本人に確認したうえで、「いつ頃会社から送付する予定か」まで伝えておくと、退職後の不安を軽くしてあげられます。59歳以上の退職者については、本人の希望の有無にかかわらず離職票の交付が必要となる点も、頭の片隅に置いておきたいポイントです。

源泉徴収票・住民税など税金まわりを整理する

退職した従業員には、その年の給与支払状況をまとめた「源泉徴収票」を渡す必要があります。退職後1か月以内に交付することが求められており、転職先での年末調整や、転職しない場合の確定申告に使われます。あまり遅くなると、退職者が次の手続きで困ってしまうため、できるだけ早めに用意して送付しておくと親切です。

住民税についても、退職のタイミングによって扱いが変わります。

原則として、在職中は会社が給与から天引き(特別徴収)をしていますが、退職後は本人が自分で納付する普通徴収へ切り替わるケースや、退職時に残りの税額を一括で徴収するケースがあります。退職月や自治体によって扱いが異なる部分もあるため、「退職後に自宅へ届く納付書があるかもしれない」ということだけでも前もって伝えておくと、後からの問い合わせがぐっと減ります。

退職時によくあるトラブルを事例で見る

例えば、小さなカフェA店では、スタッフの退職時に「健康保険証の返却」と「離職票が必要かどうか」の確認をしていませんでした。

その結果、

  • 健康保険証が数週間返却されず、資格喪失の届出が後ろ倒しに
  • 本人は失業給付の手続きをしたいのに離職票が手元になく、再度お店に問い合わせ

という二重の手間が発生してしまいました。

その後A店では、退職が決まったタイミングで

  1. 健康保険証の返却日
  2. 離職票の希望有無
  3. 源泉徴収票と住民税の簡単な説明

を、チェックリストにして説明するようにルール化しました。結果として、退職者からの問い合わせも減り、「退職のたびにバタバタする」状況から脱出できたそうです。

完全に同じやり方をする必要はありませんが、「うちのお店なら、どの項目を必ず説明するか?」という観点で、自店舗用のチェックリストを作っておくと安心です。

【従業員側】退職前にやること

【従業員側】退職前にやること

ここからは、従業員の立場で退職前に押さえておきたいポイントを見ていきます。会社側としても、これらをあらかじめ伝えておくと、スムーズな退職につながります。

退職の意思表示と退職届の提出

従業員はまず、退職の意思を上長に伝えます。希望する退職日の少なくとも2週間前、実務では1か月前程度の申し出が一般的です。

申し出自体は口頭でも構いませんが、その後は退職届として書面で提出するのが通常です。いつどのような条件で退職するのかが紙の形で残るので、お互いの認識を合わせやすくなります。

有給休暇の使い方とシフトの相談

次に考えるのが、有給休暇の扱いです。残っている日数を確認したうえで、どこまで出勤し、どこから有給として消化するかを上長と相談します。

飲食店や小売店の場合、繁忙期やイベントの有無、人員体制によっても事情が変わります。「有給を全部使いたい」という気持ちと、「お店の運営を止めたくない」という思いのバランスを取りながら、できるだけ早い段階で相談の場を持つことが大切です。

貸与品と健康保険証の返却準備

退職が近づいてきたら、会社から借りているものを整理しておきます。制服や名札、鍵、端末類などに加え、健康保険証も重要な返却物の一つです。

健康保険証は退職日までは利用できますが、退職日以降に使うことはできません。最終出社日までに返却するのか、退職日当日まで手元に残しておくのかなど、返却のタイミングも含めて会社側と確認しておくと、双方の認識違いを防ぎやすくなります。

【従業員側】退職後にやること

【従業員側】退職後にやること

退職したあとも、従業員にはいくつかの手続きが待っています。特に、次の職場がすぐに決まっていない場合は、健康保険と年金、失業給付の3つが大きなテーマになります。

健康保険をどうするか決める

会社の健康保険は、退職日の翌日から使えなくなります。そのため、退職後すぐに別の会社に入社しない場合は、健康保険をどうするか選ぶ必要があります。

大きく分けると、

(1)国民健康保険に加入する

(2)今までの健康保険を任意継続として最長2年間続ける

(3)配偶者など家族の健康保険の扶養に入る

という3つの選択肢があります。保険料の負担や医療費の自己負担割合などがそれぞれ異なるため、退職後の収入予定や家族構成を踏まえて判断していくことになります。

会社としては、どれを選ぶべきかまで指示する必要はありませんが、「退職後は健康保険の切り替えが必要になること」と「役所や健康保険組合での手続きが必要なこと」だけでも案内しておくと親切です。

年金の種別を切り替える

厚生年金の被保険者だった従業員は、退職するとその資格も失います。その後は、基本的に国民年金に切り替えることになります。

健康保険と同じく、市区町村の窓口での手続きが必要です。健康保険と年金の切り替えは同じタイミングで行うことが多いため、「健康保険と合わせて年金の手続きも必要になる」ということをセットで伝えておくと、従業員側もイメージしやすくなります。

失業給付を受けるかどうかを考える

退職後すぐに次の仕事が決まっていない場合は、雇用保険の失業給付(基本手当)を受けられる可能性があります。給付を受けるかどうかは従業員本人の判断ですが、その際には離職票が必要になります。

自己都合退職か会社都合退職かによって、給付が始まるまでの待ち期間や、支給される期間が変わります。細かな条件や金額についてはハローワークで説明を受けることになるため、会社としては「失業給付を受けたい場合はハローワークの手続きが必要になること」「その際に離職票を使うこと」を伝えておく程度で十分です。

手続き漏れを防ぐ会社側チェックリスト

手続き漏れを防ぐ会社側チェックリスト

最後に、ここまでの内容をもとに、会社側が確認しておきたいポイントを簡単なチェックリストにまとめておきます。社内で独自にアレンジして使える“たたき台”としてご覧ください。

退職前〜退職日まで

  • 退職希望日・最終出社日を従業員とすり合わせ、記録に残しているか
  • 退職願・退職届を受理し、社内で保管しているか
  • 業務の引き継ぎ先とスケジュールを決めているか
  • 回収すべき貸与品をリスト化し、本人にも共有しているか
  • 健康保険証(本人・扶養家族分)の返却タイミングを確認しているか
  • 社内システムのアカウントや権限の停止日を決めているか

退職後(一定期間内に行うこと)

  • 社会保険の資格喪失届を期限内に提出したか
  • 雇用保険の資格喪失・離職票の手続きを行ったか
  • 源泉徴収票を作成し、退職後1か月以内に交付したか
  • 住民税の扱い(特別徴収→普通徴収など)を整理し、必要な届出をしたか
  • 年金手帳など、会社が預かっていた書類を返却したか
  • 健康保険・年金・失業給付など、退職後に必要となる手続きの概要を本人に案内したか

まとめ

まとめ

従業員の退職は、お店にとっても本人にとっても大きな節目です。

その一方で、退職のたびにゼロから調べ直していては、日々の業務に追われる店舗にとって大きな負担になります。

今回見てきたように、退職手続きは

  1. 退職の申出と退職日の決定
  2. 引き継ぎと貸与品の整理
  3. 社会保険・雇用保険・税金の届出
  4. 従業員側の健康保険・年金・失業給付の案内

という流れさえ押さえてしまえば、あとは必要な項目をチェックしていく作業に落とし込めます。

退職という出来事は、同時に「人事・勤怠・給与・保険の情報がきちんとまとまっているか」を見直す良いタイミングでもあります。勤怠管理や給与計算、シフトなどの情報がバラバラだと、退職のたびに資料集めから始めることになりかねません。

POSレジや勤怠・給与ソフトと連携しながら人の情報を一元管理できていれば、退職時の情報集めや届出の準備もスムーズになりますし、採用や教育、就業規則の見直しといった「これからの人材戦略」にも活かしていけます。

まずは本記事をベースに、自社・自店の就業規則や加入制度に合わせた

「自店舗用の退職手続きマニュアル」と「チェックリスト」を作成してみてください。

一度形にしておけば、次の退職のときには、そのマニュアルを開くだけで落ち着いて対応できるようになります。

記事の投稿者PROFILE

CASHIER カスタマーサクセス

藤原 貴雄

2014年11月入社。前職はインテリア販売を経験し、接客/営業のスキルを磨く。
前職で培ったスキルをベースにPOSレンタルの営業や各地方の物販運営業務などを経験。
2021年CASHIER事業としてチーム変更し、
現在はカスタマーサクセスのリーダーとしてチームを纏める役割を担っている。

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