
店舗運営 店舗運営において、レジは単なる「代金回収の場」ではありません。お客様が最後にお店と接する場所であり、そこでの体験が「また来たい」と思うか、「もう二度と来たくない」と思うかの分かれ道となる重要なタッチポイントです。
しかし、多くの店舗で「レジ待ちの行列」「スタッフの対応」「会計ミス」などをきっかけとしたクレームが後を絶ちません。レジでのトラブルは、その場の雰囲気を悪くするだけでなく、SNSでの拡散や口コミサイトへの書き込みなどを通じて、お店全体のブランドイメージを損なうリスクも孕んでいます。スタッフにとっても、クレーム対応による精神的な疲弊は離職の原因になりかねず、早急な対策が求められます。
本記事では、レジでクレームが発生してしまう主な5つの原因を深掘りし、現状を把握するためのチェックリストを提供します。さらに、精神論やスタッフの頑張りだけに頼らない、システム導入による根本的な「3つの予防策」についても解説します。
今日からできる対策と、将来を見据えた環境整備の両面から、快適なレジ周りを構築していきましょう。
【今回のコラムをざっくりまとめると…】
レジでのクレームは店舗の信頼を損なう大きな問題です。「待ち時間が長い」「会計ミスが多い」など、クレームには必ず原因があります。本記事では、レジでクレームが起こる5つの原因をチェックリスト付きで解説。さらに、POSレジやキャッシュレス決済の導入によって、トラブルを未然に防ぐ具体的な3つの予防策をご紹介します。

「なぜかレジでお客様を怒らせてしまうことが多い」「スタッフによって対応に差がある」。そう感じているなら、まずは自店の現状を客観的に把握することが先決です。 クレームには必ず原因があります。以下の「店舗のクレーム原因診断チェックリスト」を活用して、潜在的なリスクを洗い出してみましょう。
カテゴリ | チェック項目 | はい | いいえ |
待ち時間 | □ ピークタイムにレジ前で3人以上の行列が常態化している |
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| □ レジ応援を呼ぶ基準やタイミングが不明確である |
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| □ スタッフが現金やカードの扱いに手間取ることがある |
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| □ レジ周りが整理されておらず、袋詰めなどに時間がかかっている |
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接客態度 | □ スタッフの笑顔やアイコンタクトが不足していると感じる |
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| □ 「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」などの挨拶に元気がない |
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| □ お客様がいない時に、スタッフ同士で私語や作業に夢中になっていることがある |
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| □ お客様からの質問に対し、面倒そうな態度や曖昧な返答をしてしまうことがある |
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支払方法 | □ 利用できるキャッシュレス決済の種類が3種類以下である |
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| □ お客様から「〇〇(決済手段)は使えますか?」と頻繁に質問される |
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| □ 現金払いのみの対応で、お客様が購入を諦めたことがある |
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付帯サービス | □ ポイントカードの有無の確認を忘れることがある |
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| □ クーポンや割引の適用ルールが複雑で、スタッフも完全に把握できていない |
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| □ お客様へのルールの説明が不足しており、後からトラブルになることがある |
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いかがでしたか?「はい」の数が多いほど、クレーム発生のリスクが高い状態と言えます。ここからは、チェックリストの項目にも関連する5つの主な原因について詳しく解説していきます。
レジ前の長い行列は、顧客にとって最も大きなストレス要因の一つです。現代人は時間を非常に重視しており、わずか数分の待ち時間であっても「長く待たされた」という強い不満を感じやすい傾向にあります 。
特にランチタイムや夕方のピーク時に、レジの台数が足りていなかったり、スタッフの操作スキルが未熟で会計がスムーズに進まなかったりすると、お客様のイライラは募る一方です 。
「たかが待ち時間」と侮ってはいけません。行列を見ただけで入店を諦める、あるいは商品を棚に戻して帰ってしまう「機会損失」が発生している可能性もあります。また、待たされた挙句にレジ対応が遅いと、「こんなに待ったのに手際が悪い」と、些細なミスでも大きなクレームに発展するトリガーとなってしまいます 。
顧客は商品だけでなく、「気持ちの良い購買体験」を求めて来店します。そのため、スタッフの接客態度は顧客満足度を左右する極めて重要な要素です 。
無愛想な態度、ボソボソとした聞き取りにくい声、お釣りを片手で渡すといった不適切な所作は、お客様に「大切にされていない」という不快感を与え、即座にクレームに直結します 。
また、お客様がレジ前に立っているのに気づかずスタッフ同士で私語を続けていたり、作業の手を止めずに「少々お待ちください」と言い続けたりすることも厳禁です。どんなに効率的にレジをこなしていても、接客の質が低ければ、店舗への信頼は築けません。笑顔やアイコンタクトといった基本的なコミュニケーションが不足しているだけで、お客様は冷たい印象を持ってしまうのです。
金銭が絡むミスは、他のミスに比べて店舗の信頼を著しく損なう可能性が高いため、特に注意が必要です 。
これらは、典型的な人為的ミス(ヒューマンエラー)です。例えば、特売商品の割引が適用されていなかったり、お釣りが少なかったりした場合、お客様は「損をさせられそうになった」と感じ、店舗に対して強い不信感を抱きます 。
たとえそれが悪意のないうっかりミスであったとしても、一度失った信頼を取り戻すのは容易ではありません。「この店は会計が信用できない」というレッテルを貼られてしまえば、リピーター離れにつながるでしょう。
キャッシュレス決済が社会インフラとして定着した現在において、支払い方法の選択肢が少ないことは、それだけで顧客満足度を下げる要因になります 。
「現金のみ」の店舗で、会計時に初めてそれに気づいたお客様が、慌てて財布の中身を確認したり、ATMにお金をおろしに行かなければならなくなったりするケースは少なくありません。これはお客様に多大な手間とストレスをかけるだけでなく、「不便な店」という印象を与えてしまいます。
現金払いにしか対応していないことは、キャッシュレス派の顧客を門前払いしているのと同じであり、大きな機会損失です 。多様な支払いニーズへの対応は、もはやサービスの一環ではなく、顧客満足度向上に不可欠な要素となっています。
ポイントカードやクーポンは、お客様にとって「お得に買い物をする」ための重要な権利です。そのため、ここでの不手際は「損をした」という感情に直結しやすく、激しいクレームになりやすい特徴があります。
こうしたトラブルは、ポイントの付け忘れや説明不足、クーポンの適用ミスが原因です。ルールが複雑すぎるとスタッフも把握しきれず、お客様への案内も曖昧になりがちです。明確な運用ルールと、それをサポートするレジシステムの仕組みが求められます。

どれほど予防策を講じても、クレームを完全にゼロにすることは難しいかもしれません。しかし、万が一クレームが発生してしまった場合でも、その後の対応次第で顧客の信頼を回復し、時にはファンになってもらえることさえあります 。
クレーム対応の基本ステップは、「傾聴」「謝罪」「提案」の3つです 。 1.傾聴:まずは、お客様の言い分を遮らずに最後まで聞くことが最も重要です 。お客様は「自分の不満を分かってほしい」という強い感情を持っています。途中で口を挟んだり言い訳をしたりせず、相槌を打ちながら真摯に耳を傾けましょう。 2.謝罪:事実確認を行い、こちらの不手際が明らかになった場合は、誠意を持って謝罪します 。この時、「不快な思いをさせてしまったこと」に対して謝罪する姿勢が大切です。 3.提案:謝罪だけで終わらせず、不満を解消するための具体的な解決策や代替案を提案します 。例えば、商品の交換、返金、あるいは次回利用できるサービスの案内など、お客様が納得できる着地点を探ります。
対応を誤ると、小さな火種が大きな炎上へと発展してしまいます(二次クレーム)。以下のような対応は絶対に避けましょう 。

クレーム対応スキルを磨くことも大切ですが、それ以上に重要なのは、そもそもクレームが起きない環境を作ること、「予防」です 。 スタッフの個人の能力に依存するのではなく、店舗運営の「仕組み」や「システム」を見直すことで、クレームの原因を根本から断つことができます 22。ここでは3つの具体的な予防策を紹介します。
「会計ミス」や「待ち時間」の問題を解決する最も有効な手段は、高機能なPOSレジの導入です 。 従来のアナログなレジ(ガチャレジ)では、金額の手入力が必要で、打ち間違いのリスクが常にありました。しかし、POSレジであればバーコードをスキャンするだけで正確な商品登録が可能です。これにより、金額の打ち間違いはほぼゼロになります 。 さらに、自動釣銭機と連携させれば、お釣りの計算や排出も自動化されるため、金銭授受のミスも撲滅できます。スタッフはお金の計算というプレッシャーから解放され、その分、お客様への挨拶や袋詰めなどのサービスに集中できるようになります。 スタッフの負担を軽減し、より丁寧な接客に集中できる環境を作ることこそが、最強のクレーム予防策と言えるでしょう 。 POSレジについてはこちらをご覧ください
「支払い方法が少ない」という不満を解消するために、キャッシュレス決済の導入は急務です 。 クレジットカード、電子マネー(交通系IC、iD、QUICPayなど)、QRコード決済(PayPay、楽天ペイなど)といった多様な決済手段に対応することで、お客様は自分が普段使っている、あるいはポイントを貯めている決済方法を自由に選ぶことができます 。これにより、「使いたい方法が使えない」というフラストレーションを未然に防げます。 また、キャッシュレス決済は現金の受け渡しがないため、会計スピードが格段に速くなります。小銭を探す時間やお釣りの渡し間違いのリスクが減るだけでなく、現金の取り扱いミスそのものを削減できるメリットがあります 。 キャッシュレス決済についてはこちらをご覧ください
「待ち時間」の削減に劇的な効果を発揮するのが、顧客自身が会計を行うセルフレジ(フルセルフレジまたはセミセルフレジ)の導入です 。 特に、ドリンク1本やパン数個といった少量の買い物をされるお客様をセルフレジに誘導することで、有人レジの混雑を大幅に緩和できます。お急ぎのお客様は自分のペースでサッと会計を済ませることができるため、レジ待ちのストレスから解放されます 。 また、最近では「店員と会話したくない」「自分のペースで袋詰めしたい」という理由で、非接触・非対面での会計を好むお客様も増えています。セルフレジはこうしたニーズにも応えることができ、新たな顧客満足を生み出すことにつながります 。 有人レジとセルフレジを適切に組み合わせることで、店舗全体の回転率を高め、スムーズな購買体験を提供しましょう。 セルフレジについてはこちらをご覧ください

本記事では、レジでクレームが発生する5つの原因と、具体的な予防策について解説しました。
CASHIERでは店舗のレジ環境を整えることが可能なPOSレジ・セルフレジ・決済端末を取り揃えております。ぜひこの機会に、レジ周りの運用とシステムを見直し、お客様にもスタッフにも優しい店舗作りを目指してください。