POSレジをはじめ、店舗で長く使用する設備は固定資産として扱われるため、経営に大きな影響を与えます。また、POSレジの法定耐用年数は5年となっており、5年が経過すると減価償却ができません。決算の際には耐用年数から減価償却を行うなどの処理が必要です。
そのため、店舗運営をする方ほど、設備・機器の耐用年数、減価償却に関する知識を持っておく必要があります。POSレジの場合、導入の仕方によって減価償却の対象となるかどうかが異なるため、導入方法の特徴もあわせて押さえておくべきです。
そこで本記事では、POSレジやPOSシステムの耐用年数、減価償却の方法、導入費用を抑える方法を解説していきます。
【今回のコラムをざっくりまとめると…】
この記事では、POSレジの減価償却の重要性とその計算方法について詳しく解説しています。減価償却は、資産の取得価格を耐用年数にわたって配分する手法であり、税務上のメリットを提供します。特に、POSレジを導入する際には、適切な減価償却の理解が必要です。記事では、実際の計算例や注意点も取り上げられており、実務に役立つ情報が得られます。
そもそもPOSレジとは「Point Of Sales」の略で「販売時点情報管理」できるレジのことです。一言であらわすと、「商品の販売時の商品情報を読み取り、自動的に収集できるレジ」となります。
POSレジは通常のレジよりも高機能なため高額なものが多くラインナップされています。そこで小規模店舗でも導入しやすいよう各POSレジメーカーは、購入・レンタル・リースと3つの導入方法を設けているのです。
POSレジについて詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください
文字通りPOSレジの代金を一括で支払い購入する場合、POSレジ購入後は購入者の所有物になります。そのため、細かい免責事項などを気にせずに利用できるのがメリットです。
ただし、初期費用が高額になる傾向にあります。POSレジの種類によりますが、中には数十万円~100万円を超えるものも。また、修理代やバージョンアップなどによる買い替え時には導入時と同様の費用がかかります。
レンタルでは、POSレジ提供メーカーが所有しているPOSレジを借りて使用します。
多くのPOSレジメーカーがレンタルプランを用意しており、気軽に導入できる契約形態になっています。また、リースと異なり、短期契約も可能な点も嬉しい点といえるでしょう。
ただし、レンタルするデメリットは、リースに比べると月額料金が高いことが多いことが挙げられます。また、POSレジメーカーが用意しているプランにある機種しか選定できません。
そのため、自社ならではのサービスを提供するため、自由にPOSレジをカスタマイズしたいという場合には不向きといえるでしょう。
リースでは、利用者が希望するPOSレジを選択し、販売業者と利用者との間にリース会社が入って利用者に代わってリース会社がPOSレジを購入します。リース会社の所有物になったPOSレジを、利用者がリース会社から賃借して利用するという形態です。
レンタルに比べ、初期費用や月額料金が抑えられます。また、自社が希望したPOSレジを選べるため、思ったとおりの機種や種類を手に入れられるでしょう。
ただし、審査が必要であることから導入までに時間がかかる点や、数年単位の長期契約が一般的であることから、途中解約ができない点は注意が必要です。
導入したPOSレジは、基本的に減価償却の対象となります。そこで、ここでは固定資産や減価償却、耐用年数といった経理上の処理のために必要な事項について解説します。
減価償却とは、固定資産を長期にわたって使用していく中で、劣化により価値が減少していくものとする考え方です。そこで、固定資産にかかった費用は一括で計上するのではなく、減価償却の経費として、年を分けて処理します。
減価償却の計算は、国税庁が定めている「耐用年数表」に沿って実施します。耐用年数表には、設備や機器ごとに減価償却される年数が記されています。
耐用年数表では、POSレジやPOSシステムの耐用年数は5年と定められています。耐用年数を超過した機器を使用し続けても、減価償却はできません。
POSレジの減価償却は、先ほどご紹介した3つの導入方法のどれを選ぶかによって異なってきます。そこで、ここでは導入方法別に、減価償却の対象となるのかどうかについて解説します。
・購入した場合
POSレジを購入した場合には、原則、固定資産となります。そのため、耐用年数表に沿って、5年間の減価償却処理が必要です
自社の固定資産となるため、レンタル・リースのように月額料金がかからないため、会計処理も含めるとトータルコストを抑えられます。また、契約における定期的な手続きも必要ありません。
ただし、減価償却の処理を実施する手間がかかります。
・レンタルした場合
POSレジをレンタルした場合には、借り受けている状態になるため、固定資産の対象にはなりません。
初期費用を抑えられる点や減価償却費、固定資産税がかからないため、税務上の処理にかかる労力も発生しません。
・リースした場合
POSレジをリースした場合には、購入に準ずる扱いとなり、基本的にはリース資産として減価償却が必要になります。
そのため、リースした場合も購入した場合同様に、減価償却の処理を行う労力がかかります。
POSレジを導入する場合、本体とともに連携できる周辺機器もあわせて導入することが多くあります。
周辺機器においても、POSレジと同様に耐用年数が定められていますが、以下の周辺機器は、耐用年数が5年と定められています。
ただし、機器によって例外があります。そのため、減価償却における内容は、手続きの前にしっかりと確認するようにしてください。
減価償却の計算は、以下の2つの方法があります。
計算が簡単で、わかりやすいのは定額法といわれています。定額法では、法定耐用年数に応じて、毎年、減価償却を計上する方法です。
以下の国税庁のホームページで詳細を確認してください。
参考:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」
POSレジや周辺機器を導入するためには、企業に費用面の負担がかかります。
しかし、中小企業を中心に、デジタル化による業務効率化や売上向上を支援する補助金があり、POSレジや周辺機器導入に利用できる可能性があります。
補助金とは、国や地方自治体が企業の取り組みを支援するために実施している、原則、返済不要の資金調達制度です。受給するには受給要件を満たし、審査を通過する必要があるものの、受給できれば費用負担の低減に役立つでしょう。
POSレジ導入に利用できる補助金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:POSレジ導入時は補助金を活用するべき!申請方法や注意点を解説
また、サーバーを自社に設置しないクラウド型POSレジを選定することでも導入価格を抑えられます。気になる企業の方は、以下の記事をご覧ください。
POSレジには多様な機能が備わっており、お店の運営や会社の経営に欠かせない便利な機器ですが、タブレットPOSが増えてきている昨今においても内容によっては高価になり得るので、導入方法については経営計画に合わせた判断が必要です。
自社の運用形態にあった導入・運用計画を立て、補助金を活用しながら戦略的な経営に役立てましょう。