POSレジをはじめ、店舗で長く使用する設備は固定資産として扱われるため、経営に大きな影響を与えます。また、POSレジの法定耐用年数は5年となっており、5年が経過すると減価償却ができません。決算の際には耐用年数から減価償却を行うなどの処理が必要です。
そのため、店舗運営をする方ほど、設備・機器の耐用年数、減価償却に関する知識を持っておく必要があります。POSレジの場合、導入の仕方によって減価償却の対象となるかどうかが異なるため、導入方法の特徴もあわせて押さえておくべきです。
そこで本記事では、POSレジやPOSシステムの耐用年数、減価償却の方法、導入費用を抑える方法を解説していきます。
【今回のコラムをざっくりまとめると…】
この記事では、POSレジの減価償却の重要性とその計算方法について詳しく解説しています。減価償却は、資産の取得価格を耐用年数にわたって配分する手法であり、税務上のメリットを提供します。特に、POSレジを導入する際には、適切な減価償却の理解が必要です。記事では、実際の計算例や注意点も取り上げられており、実務に役立つ情報が得られます。
POSレジ本体の法定耐用年数は、5年と定められています。しかし、端末の種類や周辺機器によって、耐用年数が異なるため注意が必要です。 ここでは、POSレジと周辺機器の法定耐用年数について詳しく解説します。
国税庁が定める「減価償却資産の耐用年数表」によると、POSレジ本体の法定耐用年数は5年と定められています。項目としては、「事務機器、通信機器」の中の「電子計算機→その他のもの」の分類です。
この5年という期間を基準に、購入したPOSレジの減価償却が行われ、会計上の費用配分が決まります。「耐用年数5年」は5年間必ず使えると言う意味ではなく、あくまで目安の数字です。もちろんPOSレジの性能に問題がなければ、5年以上使用できます。
POSレジといっても、その種類によって法定耐用年数は異なる点には注意が必要です。たとえば、以下のような違いがあります。
ただし、パソコンやタブレットにPOSシステムを追加する場合は、法定耐用年数5年です。パソコン・タブレットの端末の耐用年数は4年、ソフトウェアは5年と別々に減価償却する必要があります。
また、ガソリンスタンドのPOSレジは、給油機にPOSシステムが組み込まれているため「給油機」として計算し、耐用年数は8年です。このように、POSレジの耐用年数は一律ではなく分類によって変わるため、どの勘定項目に該当するのかを確認し、正確な耐用年数を把握しましょう。
周辺機器にも個別の耐用年数が定められています。
周辺機器 | 法定耐用年数 |
バーコードスキャナー | 5年 |
キャッシュドロア | 5年 |
レシートプリンター | 5年 |
ハンディターミナル | 5年 |
LAN設備 | 10年 |
このように、周辺機器の耐用年数はPOSレジ本体と同じく5年程度とされるのが一般的です。あくまで税務上の目安であり、実際の使用環境や稼働状況によって寿命が短くなることもあれば長くなることもあります。減価償却の際は、しっかりとチェックするようにしましょう。
POSレジの法定耐用年数を正しく理解するためには、関連する会計用語の基礎知識が欠かせません。ここでは、以下の会計用語を解説します。
法定耐用年数とは、国税庁が定める「資産を使用できるとみなされる期間」のことです。たとえば、POSレジの場合は「事務機器等」に分類され、5年という耐用年数が適用されます。
この年数は、実際にその資産が物理的に使える期間ではなく、税務上で費用を配分するための基準です。企業はこの期間に沿って購入金額を分割し、毎年の経費として計上します。
法定耐用年数を過ぎたものに関しては、会計上での資産価値がなくなり、減価償却費として計上できません。
固定資産とは、流通や販売を目的とせず企業が長期にわたって事業活動で利用する資産のことです。一般的には「1年以上使用すること」と「取得価格が10万円以上であること」が条件とされています。
また、固定資産は3種類に分類されます。
POSレジも固定資産に該当し、購入時にその価値を資産として計上します。
また、会社で固定資産を保有する場合は、必ず固定資産台帳に登録しなければなりません。台帳には、資産の名称や取得価格、取得年月日、設置場所などの基本情報に加え、耐用年数、償却方法、償却率といった会計処理に関わる内容を記載します。
減価償却とは、固定資産の取得費用を耐用年数に応じて、数年に分けて経費として計上する会計処理のことです。減価償却を行う方法には「定額法」と「定率法」の2種類があります。
定額法は毎年一定額を均等に計上する方法で、たとえばPOSレジを100万円で購入し、耐用年数が5年なら毎年20万円ずつ計上します。一方で、定率法は毎年同じ割合で減価償却する方法です。
どちらを選んでも最終的な償却額は同じになります。また、資産として保有していることを記録するため、実務上は資産管理上の便宜から「備忘価額」として1円を残すケースが一般的です。
POSレジを導入する際には、購入・レンタル・リースといった複数の方法があり、それぞれ会計処理上の扱いも異なります。導入方法によって減価償却の有無や方法が変わるため、税務や経理処理の観点から事前に十分理解しておくことが重要です。
ここでは、導入方法別のPOSレジの減価償却について解説します。
POSレジを購入した場合、固定資産として分類され、法定耐用年数に基づいて減価償却が必要です。金額によって会計処理の方法が異なります。まず10万円以上20万円未満であれば、通常の減価償却方法に加えて一括で経費計上が可能です。
青色申告をしている法人や個人事業主の場合は、「少額減価償却資産の特例」で取得年度内に全額経費計上できる可能性があります。ただし、特例を利用するには一定の要件を満たす必要があるため、事前に最新の情報を確認しておくことが大切です。
POSレジをレンタルで利用する場合、会計上は「賃借料」として毎月の費用に計上します。購入と異なり、資産として計上する必要がなく、減価償却の対象にもなりません。
そのため、経理処理はシンプルで、導入初期の負担を抑えたい場合には便利です。また、所有物ではないため固定資産税を負担する必要がない点もメリットといえます。
ただし、長期的に使う場合は購入やリースよりも高額になりやすいため、利用期間や費用の見通しをしっかり確認して選ぶことが大切です。
リースとは、リース会社が購入した機器や設備を長期間借りて利用する契約のことです。ファイナンスリースとオペレーティングリースの2種類があります。
POSレジをリース契約で導入する場合も、基本的には購入と異なり資産計上をせず、毎月の支払いを「リース料」として費用処理します。そのため、通常は減価償却の対象外です。
ただし「ファイナンスリース」の場合、実質的には購入と同じ扱いを受けるため、税務上は資産計上して減価償却を行うケースがあります。見た目はレンタルに近い契約でも、内容次第で会計処理が変わる可能性があるため、契約形態を事前に確認しておくことが重要です。
POSレジや周辺機器を導入するためには、企業に費用面の負担がかかります。 しかし、中小企業を中心に、デジタル化による業務効率化や売上向上を支援する補助金があり、POSレジや周辺機器導入に利用できる可能性があります。
補助金とは、国や地方自治体が企業の取り組みを支援するために実施している、原則、返済不要の資金調達制度です。受給するには受給要件を満たし、審査を通過する必要があるものの、受給できれば費用負担の低減に役立つでしょう。
POSレジ導入に利用できる補助金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:POSレジ導入時は補助金を活用するべき!申請方法や注意点を解説
また、サーバーを自社に設置しないクラウド型POSレジを選定することでも導入価格を抑えられます。気になる企業の方は、以下の記事をご覧ください。
POSレジを導入するときに、会計処理は少し専門的に感じられますが、基本を知っておくと安心です。ここでは、POSレジの会計処理に関してよくある質問をわかりやすく解説します。
POSレジは、取得価額が一定以上であれば資産計上が必要な固定資産となります。具体的には、購入金額が10万円以上の場合は固定資産として扱い、耐用年数(POSレジは通常5年)に基づいて減価償却を行わなければなりません。
一方で、10万円未満の場合は、全額を経費処理できます。さらに10万円以上30万円未満の場合では、中小企業であれば「少額減価償却資産の特例」により一括で経費計上できるケースがあります。
POSシステムは端末本体だけでなく、それを動かすシステムやソフトウェアで構成されているため償却資産です。ソフトウェアは無形の資産と考えられ「無形固定資産」として、ハードウェアは「器具及び備品」として計上します。
法定耐用年数はハードウェア・ソフトウェアともに5年で、システム導入費用を数年に分けて経費にする形になります。また、自治体によっては償却資産税の申告が必要となる場合があるため、導入時には必ず確認しておきましょう。
POSレジを購入した際の勘定科目は、取得価額や用途によって分かれます。
一般的に10万円以上で固定資産に該当する場合は「工具器具備品」、10万円未満であれば「消耗品費」として仕訳されます。また、レンタルやリースの場合は資産計上せず、レンタルは「賃借料」、リースは「リース資産」として扱う点も重要です。
このように、同じPOSレジでも購入金額や契約形態によって勘定科目が変わるため、導入時には必ず確認が必要です。誤った処理を避けるためにも、税理士など専門家に相談することも検討しましょう。
POSレジには多様な機能が備わっており、お店の運営や会社の経営に欠かせない便利な機器ですが、タブレットPOSが増えてきている昨今においても内容によっては高価になり得るので、導入方法については経営計画に合わせた判断が必要です。 自社の運用形態にあった導入・運用計画を立て、補助金を活用しながら戦略的な経営に役立てましょう。