セルフレジを導入している小売店が増えている理由の一つに、「人手不足」の解消を目指すということが挙げられます。しかし、実際にセルフレジの導入により、人手不足解消につながっていないという事例を聞いたことがある企業の方もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事では、「セルフレジ導入は、人手不足に有効なのかどうか」について解説します。また、セルフレジ導入における課題やセルフレジ導入を失敗しないためのポイントについても紹介します。
【今回のコラムをざっくりまとめると…】
この記事では、セルフレジの導入における人手不足の影響について述べられています。人手が不足している中で、セルフレジは業務の効率化や顧客満足度の向上に寄与しますが、適切な導入や運用が求められます。また、セルフレジがもたらすコスト削減やスタッフの業務負担軽減といったメリットも強調されています。
そもそも、セルフレジとは、消費者が自分で商品の会計を行うレジのことです。従来、従業員が行っていた業務の一部もしくはすべてを顧客が行うため、業務効率化や従業員の負担軽減、人手不足における対策として導入が進められています。 セルフレジには、会計業務の工程のうち、どの部分を消費者が行うかによって、以下の3つに種類が分けられています。
さまざまな企業が、自社の業界における特徴や導入目的に合わせて、レジを選定しています。それぞれのセルフレジの詳細については、以下の記事をご覧ください。 関連記事:セルフレジとは?導入すべき業種やメリット・デメリット、注意点を徹底解説 関連記事:セミセルフレジとは?メリットやデメリット、利用できる補助金を解説
セルフレジは主に以下の3つに分かれます。それぞれの特徴と機能を見ていきましょう。 ・フルセルフ 顧客が商品のスキャンから会計までの操作を全て行うレジです。店員の介入がないため、人件費削減に貢献できる特徴があります。 タッチパネルで購入商品や合計金額が見やすいほか、現金やクレジットカードなどさまざまな決済方法に対応しています。 ・セミセルフ 商品スキャンは店員が行い、会計は顧客が行うレジです。完全なセルフレジ(フルセルフレジ)とは異なり、店員とお客様が役割を分担して会計を行う仕組みになっています。 フルセルフレジよりも顧客が操作しやすく、よりスムーズな精算を行うことが可能です。 ・モバイル型 モバイル型のセルフレジとは、お客様自身のスマートフォンや専用端末を使って、商品スキャンや支払いを行うセルフレジです。お店のレジに並ばずに買い物と会計が完結するだけでなく、非接触で衛生的なレジとして注目されています。
日本におけるセルフレジの普及状況はスーパーマーケットなどの小売店において37.9%となっています。(2024年 スーパーマーケット年次統計調査 報告書より)
企業分類別にみると、保有店舗数が多い企業ではセルフレジを設置している割合が高いほか、地方圏の企業で都市圏に比べ設置の割合が高くなる傾向にあります。
また、セルフレジを「新たに設置したい」企業は28.9%、「台数を増やしたい」企業は17.0%。と、セルフレジを設置していない企業においてもこれから設置したいと考えている企業が約半数程度となっており、今後も普及率が高まることが予想されるでしょう。
セルフレジは、人手不足に貢献できる以外にも導入目的があります。
1.顧客体験の向上
セルフレジは、タッチパネルで操作性も良いうえ、顧客が自分のペースで操作を行えるため、ストレスの軽減や満足度向上につながります。また、従来のレジで発生していたような釣銭ミスもなくなるため、よりスムーズな会計が可能になります。
2.待ち時間短縮
セルフレジでは自動釣銭機による会計処理の正確性や効率性が向上するため、混雑緩和につながります。待ち時間の長さによるクレームが発生するリスクを減らすことも可能です。
3.感染症対策
セルフレジでは顧客と従業員間での釣り銭やカードなどの受け渡しが不要になるため、衛生面の懸念を解消することができます。また、キャッシュレス決済もセットで導入すればお札や硬貨に触れる必要もないため、より衛生的な運用が可能です。
セルフレジの導入は、人手不足対策に有効なのでしょうか。インターネット上には、「セルフレジエリアを、多くのスタッフが周りで見ていなければならない」などの情報が出ており、その効果に不安を感じているという企業の方もいるかもしれません。 実は、セルフレジ導入に失敗すると、セルフレジを導入することで人手不足になるという本末転倒の事態に陥る可能性があります。ただし、しっかりと体制を整えてから導入したことで、人手不足解消の効果をあげている企業も多くあるのです。 そのため、人手不足対策に有効かどうかは、セルフレジそのものよりも、導入する企業が受け入れ体制を十分に整えられるかどうかが非常に重要になります。 セルフレジ導入を成功させるために、以下に紹介するセルフレジ導入の課題や失敗しないためのポイントをご覧ください。
セルフレジ導入では、人員削減や業務効率化に効果があります。
一般的に、セルフレジは導入してから3年程度で投資を回収することができると言われています。都市部のスーパーなどでは、全体の人件費として20%が削減されたというデータもあります。
また、人件費の削減だけではなく、レジスタッフの人数を減らし、商品陳列や接客など別の業務に集中できるため、店舗全体の業務効率化にも繋げることも可能です。
2025年の最低賃金の平均から人件費を計算し、いくら削減できるのか目安を計算しました。なお、2025年の最低賃金の平均は1,055円です。
業種 | 導入前の人件費(月間) | 導入後の人件費(月間) | 削減人数 | 削減額(月間) |
小売店 | 1,055円×5時間×20日×5人=約52万円 | 1,055円×5時間×20日×3人 = 約31万 | 2人 | 約21万円 |
飲食店 | 1,055円×4時間×20日×5人 = 約42万円 | 1,055円×4時間×20日×3人 = 約25万 | 2人 | 約16万円 |
サービス業 | 1,055円×8時間×20日×3人 = 約50万円 | 1,055円×8時間×20日×1人 = 約16万 | 2人 | 約33万円 |
このように、各業種において差はあるものの、16~33万円程度月間でコストカットができることが分かります。
セルフレジの導入効果は、店舗規模や業種によって異なります。 以下では、店舗や業種別での導入効果の違いを解説します。
1.小規模店舗
小規模店舗ではスタッフが少ない店舗が多く、セルフレジ導入によって店主の負担軽減に繋がります。個人店などでは導入時の初期費用がデメリットになりがちですが、最近では、低価格・簡易設置型のセルフレジ端末も登場しており、条件が合えば導入効果は十分に見込めるでしょう。
2.大型店舗
大型小売店では、セルフレジを複数台設置することが多く、顧客の待ち時間緩和が期待できます。また、レジスタッフも削減できるほか、レジ締め作業などの業務も効率化できます。 特にチェーン店や大型スーパーでは、セルフレジと有人レジのハイブリッド運用を導入することで、さまざまな顧客ニーズに対応しながら、全体の業務効率を高めることが可能です。
セルフレジの導入で人手不足を解消した企業には以下の共通点があります。
1.適切な導入計画
人手不足の解消に成功した企業は事前にしっかりと計画を立てた上でセルフレジを導入していることが多いです。導入前の準備から導入後のサポート体制まで入念に計画を立てておくことで、トラブルなくスムーズにセルフレジを設置することができます。
2.スタッフ教育のしやすさで人手不足解消
セルフレジは従来のレジよりも操作などを自動化できるため、スタッフ教育を円滑に行うことができます。指導に充てる時間や人手も少なく済むことから、結果的に人手不足の解消に繋がっている企業も多いです。
3.顧客サポート体制
セルフレジはタッチパネルで操作がしやすいほか、エラーの対処もしやすいです。そのため、複数台のセルフレジに対して、レジスタッフ1名でも顧客のサポートが可能になります。結果、人手不足になりづらいといった効果が得られます。
セルフレジ導入が失敗する原因になりやすい課題について解説します。
まず、最も大きな課題として、機械の扱いに不慣れな利用者の多さが挙げられます。特に、高齢者が多い店舗においては、操作をサポートする人員が必要になるでしょう。こうしたサポート人員が多く必要になると、有人レジに比べて、配置されるスタッフの人数の方が多くなる可能性があります。
次に、自店舗のスペースが狭く、セルフレジの設置により消費者の導線を妨げてしまうことが挙げられます。セルフレジは比較的大きな機器となっているため、思っているよりもスペースを要するために、業務効率の低下につながる可能性があります。
万引きや未払い、機器の故障などのトラブルへの対応も忘れてはならない課題です。また、お酒などの年齢確認が必要な商品における対策も必要になります。こうしたトラブルに対する対策を決めておかなければ、運用時に混乱を招く結果になるでしょう。
セルフレジの初期費用や人件費削減効果から、ROIの計算と回収期間の目安を計算します。 セルフレジ導入に必要な項目の一例は以下のとおりです。
セルフレジ導入後は以下3つの業務が発生し、スタッフの負担になる可能性があるので注意が必要です。
1.トラブル対応
セルフレジの操作ミスや機械の不具合による対応を行う必要があり、操作方法や修理業者への連絡先などを共有しておく必要があります。
2.顧客サポート
高齢者や外国人などセルフレジに不慣れな顧客の対応業務が増加します。操作などの説明方法や配慮した接客などが求められるため、スタッフの新たな業務負担となります。
3.在庫管理
セルフレジの導入により、店舗の業務効率が改善することから、商品陳列などの業務が増加します。
ここまでにご紹介した課題を解決し、セルフレジ導入を失敗しないためのポイントについて解説します。
まず、自社の店舗に合わせたセルフレジを選定しましょう。以下の記事で、業種の特徴に合わせたセルフレジや導入事例について、まとめていますので参考にしてください。
関連記事:飲食店にセルフレジを導入するべき?メリット・デメリットを徹底解説
関連記事:セルフレジをスーパーに設置するメリットや押さえておきたいポイント
また、自店舗の顧客層や取扱商品、スペースの広さによっては、フルセルフレジではなく従業員が一部業務を行うセミセルフレジやその他のPOSレジの導入を検討・相談することも一つの手です。セミセルフレジやその他のPOSレジでは、1台のレジにおいて1人のスタッフがつかなければなりません。そのため、人手不足対策としては、フルセルフレジよりも効果は得られませんが、業務効率化が期待できることで省人化につながる可能性があります。
自社に適したセルフレジ選定に不安がある場合には、信頼できる提供会社によく相談してみることがおすすめです。
セルフレジ導入前には、十分に準備期間を設けましょう。マニュアル・ルールの作成や従業員の教育を実施します。特に、導入直後においては消費者のサポートをどのように実施するかは重要になるでしょう。
また、未払いや万引き防止、機械のエラーなどのトラブルへの対策も事前に検討し、準備しておきましょう。以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
セルフレジを導入しても、顧客に利用してもらわなければ無意味な投資になってしまいます。そのため、セルフレジを利用したいと思ってもらえるように利便性を高めることが重要です。
「セルフレジを導入し、自社の人手不足解消だけでなく、顧客満足度の向上につながるために何が必要なのか」という観点から対策を講じていくことがおすすめです。
セルフレジ導入後、店舗運営を最適化するためには、人員配置の構築と従業員の役割変化への対応が必要です。
人員配置でのセルフレジの監視は、1人で10台程度を担当し、混雑時は追加スタッフを配置するのが良いでしょう。役割の変化は主に以下の3つです。
・セルフレジ案内係 ・トラブル対応係 ・接客や商品管理に注力し、顧客満足度の向上を図る
例えば飲食店であれば、厨房スタッフを増やして調理効率を上げるなどが挙げられます。また、小売店ではレジスタッフを削減し、在庫管理などに配置するのが望ましいでしょう。
セルフレジ導入後には定期的な効果の測定と改善を行う必要があります。
その際、KPI(重要業績評価指標)を設定するのが良いでしょう。
KPI設定は以下の項目から測定するのがおすすめです。
また、導入前のデータと他店舗との比較なども有効です。
評価の際にはお客様アンケートだけではなく、スタッフの意見も反映させるようにしましょう。
セルフレジは人手不足解消に貢献できます。ここでは実際の導入事例から、成功例を紹介します。
・株式会社スマロジ様
病院や企業、学校などで売店を運営している株式会社スマロジ様は、人材が足りなくても24時間営業が可能な売店を展開するためにセルフレジを導入しました。人件費の高騰や感染症の影響から、少人数でも運営できる仕組み作りが課題となっていました。
株式会社スマロジ様では、セルフレジを2台使い分けて運営しています。昼間を有人で対応し、夕方から夜の時間帯はセルフレジのみを利用することで、人件費削減と人手不足解消につながっています。
・Syndi.川越R254様
国内外の古着やアクセサリーを販売しているSyndi.川越R254様は、「店員さんに頻繁に声をかけられると買わなきゃいけないかな」といった顧客心理を課題としていました。セルフレジを導入し、スタッフの数を極限まで減らすことで、顧客が自由に商品を手に取れる設計を構築しています。
Syndi.川越R254様は、アパレルでは珍しい券売機を導入しています。商品の価格と同じチケットを購入し、最後にスタッフが確認するといった流れです。
スタッフが行っていたレジ業務を簡素化できたことにより、人手不足でも円滑に運営できる仕組みができています。
セルフレジの導入事例と効果を以下3つに分けて解説します。
1.コンビニエンスストア
コンビニではセルフレジを導入し、店舗にスタッフがいない無人店があるほか、会計だけを顧客が行うセミセルフレジを設置している店舗もあります。
特に大手コンビニであるセブンイレブンでは、2020年9月からセミセルフレジを導入し、現在全国の店舗の約9割に設置されています。
感染症対策やレジ業務の時間短縮を目的に導入されており、人件費削減や顧客満足度向上に貢献しています。
2.スーパーマーケット
本記事で解説したように2024年時点で37.9%のスーパーマーケットにセルフレジが導入されており、導入店舗ではピーク時のレジ混雑が緩和され、人件費が20%も減少しています。また、レジスペースの縮小で、売り場の拡大で売上増加にも効果があります。
3.専門店
コンビニやスーパーと同様に、レジの混雑緩和に成功し、スタッフの配置人数を削減できたほか、顧客満足度の向上から売上も増加しています。
飲食業界におけるセルフレジの活用法を3つ紹介します。
1.ファストフード店
顧客がオーダーから会計までをすることで、待ち時間が短縮や顧客満足度向上に繋がっています。
2.カフェ
ファストフード店と同様に、セルフレジの導入で釣り銭ミスなどのトラブルが減ったほか、レジスタッフの人件費削減に貢献しています。
3.居酒屋
スマホオーダーとセルフレジを組み合わせることで、導線改善を実施している事例もあります。注文ミスが減らせるだけでなく、スタッフの業務効率アップにも繋がります。
なお、人員配置は、セルフレジ0~1名、元々のレジスタッフを調理場や接客などに配置するのが良いでしょう。混雑時に柔軟な動きができるようになり、顧客満足度の向上と業務効率化が図れます。
本記事では、セルフレジが人手不足対策に有効かどうかという観点から、セルフレジの課題や導入を失敗しないポイントについて解説しました。
最近では、セルフレジの導入が進んでいることから、機器の扱いに慣れ始めている消費者も多くいます。そのため、自社においてしっかりと準備することで、人手不足解消の有効なツールとなるでしょう。 人件費に課題を抱えている方に向けて、店舗運営に欠かせない“セルフレジ活用”を紹介しています。是非ダウンロードし、お役立てください。
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