これまでは数十店舗など大規模なチェーン展開をしている大企業が使用するものと考えられていたPOSシステムは、現在では技術の進歩によって手軽に導入できるようになりました。
POSレジには数多くのメリットがあることから、数店舗経営の企業や、個人のお店にも導入するケースが増えています。
この記事では、POSシステムの基本的な仕組みや機能、メリットについてわかりやすく解説します。
POSシステムの導入をご検討中の方はぜひ参考にしてください。
【今回のコラムをざっくりまとめると…】
この記事では、POSシステムの基本とその重要性について説明しています。POSは売上管理や在庫管理を効率化し、顧客満足度向上にも寄与します。種類や機能が多様化しており、クラウド型などの新しいシステムも普及しています。店舗のニーズに合ったPOSの選定が成功の鍵です。
POSシステムとは、バーコード(JANコード)を使って売上管理や在庫管理ができるシステムのことです。
POSシステムを利用することで、従来のレジスターではできなかった効率的な売上管理や顧客管理などを実現できます。
そのため、飲食店や小売店を中心に多くの企業がPOSシステムを導入しています。
また、POSレジなどPOSシステムを使うための周辺機器を指すこともあります。
POSレジとは、「Point of Sale(販売時点情報管理)」の略で、販売時に商品情報を読み取ることで、データを収集できるレジのことです。
POSレジとPOSシステムの違いは、簡単にいうと「POSレジ=レジ端末」と「POSシステム=さまざまな機能を搭載したシステム」という点です。
また両者の名前を組み合わせて、POSレジシステムと呼ばれることもあります。
POSシステムでは、バーコードをスキャナーで読み取ることで、さまざまなデータを蓄積します。
従来のレジは「会計」しかできませんが、POSシステムを搭載したPOSレジは集めたデータを分析し、経営戦略に役立てることができるのです。
POSシステムで蓄積されるデータ |
|
下記でPOSシステムの一連の流れを見てみましょう。
POSシステムは、インターネット回線に接続して使用します。
オフラインでもレジ単体で会計機能を使用することはできますが、決済情報をデータ化して保存するためにはインターネットが必要です。
レジスターは1878年、アメリカの飲食店経営者ジェームズ・リティによって、売上金の不正防止のために発明されました。
リティが作った「ダイアルレジスター」は金額を表示するだけのシンプルなものでしたが、これが後のPOSシステムの原型となります。
1884年にはレジスター販売権を取得したジョン・H・パターソンが企業を設立し、レジスターの普及が進みました。
1897年には日本にも横浜の牛島商会によって輸入され、売上記録ができる日本初のレジスターとして使用されます。
その後も1900年代初めには百貨店に導入され、次々と新しい機能が追加されていきます。
1970年代にはPOSシステムが登場し、1980年代にオンラインシステムが加わると、売上データを本部で一括管理できるようになりました。
そして現在では、クラウドで管理できるタブレット型POSレジが普及し、利便性の高いPOSレジとして小売店や飲食店で多く使用されています。
ここではPOSシステムの種類を解説します。
【一体型】
・システムが一貫して動作し、トラブルの発生率を低減
・業務の効率化と正確なデータ管理が可能
・顧客の購買情報や売上データをリアルタイムで把握可能
【パソコン型】
・OSに依存しないため、標準的な環境で安定して稼働可能
・ハードの故障やOS変更があっても簡単に移行でき、長期的な運用が可能
・様々な業態で導入しやすい
【タブレット型】
・専用のPOSシステムを構築する必要がなく、初期導入コストを抑えられるの
・リアルタイムで売上データや在庫情報を確認でき、複数店舗の管理も可能
・飲食店や小売業など、幅広い業態に向いている
スーパーマーケットやコンビニエンスストアでは、POS専用の筐体が多く普及しています。
このPOSシステムは、専用のハードウェアとソフトウェアが一体化して販売されるため、ユーザーがハードウェアとソフトウェアを別々に選ぶことはできません。
これにより、システムが一貫して動作し、トラブルの発生率が低減されるという利点があります。
例えば、レジ業務や在庫管理、売上データの分析といった店舗運営に欠かせない機能が統合され、業務の効率化と正確なデータ管理が可能になります。
また、顧客の購買情報や売上データをリアルタイムで把握でき、マーケティング施策の効果を即座に反映させることも可能です。
ただし、特定の要件がある場合、ハードウェアやソフトウェアのカスタマイズによって対応可能です。
このようなカスタマイズにより、各店舗のニーズに応じた柔軟な運用が可能になります。
パソコン型は、市販のWindowsパソコン(Windows 11、10、8など)にPOSアプリケーションをインストールすることでPOSレジとして機能させるシステムです。
パソコン型の強みは、メーカーや機種、OSに依存しないため、標準的な環境で安定して稼働する点にあります。
これにより、ソフトのアップグレードやパソコン本体の交換、機種の更新も柔軟に対応可能です。
さらに、ハードの故障やOS変更があっても簡単に移行でき、長期的な運用が期待できます。
コストパフォーマンスに優れ、さまざまな業態で導入しやすいのも利点です。
「タブレット型POS」は、iOSやAndroidなどのタブレットに専用アプリをインストール、またはWebサービスを利用してPOSレジとして使えるシステムです。
クラウドシステムと連動することが一般的で、専用のPOSシステムを構築する必要がなく、初期導入コストを抑えられるのが特徴です。
クラウド連携により、リアルタイムで売上データや在庫情報を確認でき、複数店舗の管理も可能です。
さらに、タブレットの持ち運びやすさを活かしてレジ以外の場面でも活用でき、飲食店や小売業など、幅広い業態に向いています。
POS
システムの代表的な機能を以下にまとめました。
各機能の詳細や業種別に取り入れたいおすすめ機能については、以下の記事をご覧ください。
POSシステムの導入メリットは以下のとおりです。
ここでは上記のメリットについて解説していきます。
販売実績を把握できることはPOSシステム導入の大きなメリットです。
POSシステムでは、商品が売れた時間や数量、単価などの詳細な販売データがリアルタイムで記録されます。
これにより、人気商品の売れ筋やピーク時間を簡単に把握でき、仕入れや在庫管理の効率化に役立ちます。
また、季節や天候による売上傾向の分析も可能で、次の販促計画に役立つ情報を集められます。
こうしたデータ活用により、売上の最大化や在庫の無駄削減が実現します。
POSシステムの導入により、リアルタイムで売れ行きを把握し、データに基づいた分析が可能になります。
たとえば、どの商品がよく売れているか、売れ筋の時間帯や曜日などを詳細に確認できるため、在庫の調整やプロモーションの計画が立てやすくなります。
また、商品ごとの利益率も把握できるため、店舗運営の改善に直接役立てることが可能です。
POSデータにより効率的な売上向上策を打ち出し、店舗の成長につなげられます。
業務の効率化はPOSシステム導入の大きなメリットです。従来のレジ操作や手作業での売上集計が不要になり、会計から在庫管理まで自動化できるため、スタッフの負担が軽減されます。
また、レジでの会計が迅速化し、レジ待ち時間が短縮されることで、顧客満足度も向上します。
加えて、データがクラウド上に保存されるため、複数店舗の情報も一元管理が可能。
時間や場所を問わずに売上や在庫の状況を確認でき、経営判断のスピードも上がります。
POSシステムでは売上や在庫の情報がすべて記録され、データが自動で管理されるため、不正な現金操作やデータの改ざんが難しくなります。
アクセス権限を設定することで、スタッフごとの操作履歴も確認でき、信頼性が向上します。
また、クラウド連携により、店舗外からもデータを安全にチェック可能です。
こうしたシステムの導入は、店舗運営の透明性とセキュリティの強化に貢献します。
POSシステムの導入により、販売ミスや金銭間違いが大幅に減少します。
商品バーコードをスキャンすることで手入力の必要がなくなり、商品価格の打ち間違いや計算ミスが防止できます。
また、支払い額やお釣りの計算も自動で行われるため、レジ担当者が慌ててミスをするリスクも低減されます。
さらに、システム上で売上が自動的に記録されるため、日々の精算作業も簡素化され、現金管理がより正確かつ効率的になります。
POSシステムは、複数台のレジや複数店舗での運用に対応しており、リアルタイムでデータを一元管理できます。
各店舗の売上情報や在庫状況を中央システムで統合できるため、本部からでも各店舗の状況を確認し、在庫補充や販売戦略を素早く調整できます。
また、各店舗間で販売データを比較でき、地域ごとの売れ筋やトレンドを分析しやすくなるため、より的確なマーケティング施策を打ち出すことが可能です。
クラウド連動型のPOSシステムを導入することで、インターネット環境があればどこからでも売上や在庫データにアクセスできます。
これにより、店舗外でもデータ確認や分析が可能となり、迅速な経営判断がしやすくなります。
さらに、クラウド上でデータが自動バックアップされるため、端末トラブルが発生してもデータが失われる心配がありません。
常に最新のシステムやセキュリティアップデートも適用され、安心して利用できる点もクラウド連動型POSの大きなメリットです。
POSシステムの導入デメリットは以下のとおりです。
ここからは上記のデメリットについて解説していきます。
POSシステムの導入には、初期費用や運用コストがかかる点がデメリットです。
導入時に必要な機器の購入費やシステム設定の費用、さらには月額のクラウド利用料やメンテナンス費用も継続的に発生します。
こうしたコスト負担を軽減する対策として、レンタルやサブスクリプション形式のPOSサービスを利用する方法があります。
初期投資を抑えつつ、必要な機能だけを選択できるサービスも多く、事業規模に応じた柔軟な選択が可能です。
POSシステムの導入には、停電やシステム障害によるリスクが伴います。
停電やネットワーク障害が発生すると、レジ機能が停止し、販売や在庫管理ができなくなる恐れがあります。
この対策として、モバイルWi-Fiや予備電源を用意し、通信や電力が一時的に遮断されてもPOSの稼働を確保する方法があります。
また、オフラインモード対応のシステムを選ぶことで、障害発生時も一部の機能を継続できるため、業務の混乱を防ぎます。
クラウドPOSシステムは低価格化が進んでおり、中には無料で利用できるPOSシステムもあります。
ただし、無料の場合は機能がかなり制限されるため注意が必要です。
せっかく導入しても使いたい機能が使えない、データを活かせないのでは導入した意味がなくなってしまいます。
ここでは、POSシステムを選ぶときの注意点について解説しますので、ぜひPOSレジ選びの参考にしてください。
POSシステムではインターネットを使用するため、データ送受信の安定性が非常に重要です。
POSレジにはiPadレジと専用端末レジがありますが、iPadレジの場合は通信トラブルという大きな懸念があります。
無線通信のWi-FiやBluetoothを使っていると、有線と比較するとどうしてもトラブルが多くなるのです。
また、iOSのアップデートも通信環境に影響します。
通信トラブルのせいで決済できないと、お客様に迷惑をかけることになるため、通信トラブルが少ないものを選びましょう。
外部サービスとの連携ができるかどうかという点も重要なポイントです。
POSシステムは、基幹システム・会計システムなど元々使用していたさまざまな外部サービスと連携させることが可能ですが、サービスによっては連携に対応していないケースもあります。
導入後に外部サービスとの連携ができなかったことに気付いて後悔することのないよう、事前にしっかり調べておきましょう。
POSシステムのデメリットにも挙げた故障や不具合などの緊急事態に、しっかり対応してくれるかどうかを確認しましょう。
例えば、「メール・電話での問い合わせはいつでもできるのか」「オンサイト保守は可能か」などの疑問点は契約前に把握しておくことがおすすめです。
また緊急時以外にも、初期設定や設定変更時のサポートが可能な場合もあります。
POSシステムを選ぶ際、使いやすさは非常に重要です。
操作が複雑だと、スタッフ教育に時間がかかり、操作ミスも増えるため、直感的に使えるシステムを選ぶことが教育コストを抑えるポイントです。導入前には、実際にシステムを試してみることをおすすめします。
多くのPOSシステムはデモ機やトライアル期間を提供しているため、操作感を確かめる機会を活用しましょう。
実際の業務を想定したテストを行うことで、導入後の運用がスムーズになり、現場の負担軽減にもつながります。
昨今のPOSレジには次のような機器・システムがあります。
【マルチ決済端末 × POSレジ】
【セミセルフレジ・セルフレジ】
【ハンディターミナル】
出典:株式会社ビジコム https://www.busicom.co.jp/h/newland/nls-mt37.html
【インバウンド、免税販売(免税電子化)POSレジ】
出典:株式会社ビジコム https://www.busicom.co.jp/product/business/taxation.html
【インボイス対応POSレジ】
出典:株式会社ビジコム https://www.busicom.co.jp/lp/invoice/
マルチ決済端末にPOSレジアプリをインストールすれば、「決済端末」と「POSレジ」の両方の機能を1台で利用できます。
これにより、省スペースで現金、クレジット、電子マネー、QRコードなど多様な決済に対応可能です。
また、セミセルフレジやセルフレジの導入で、顧客が自分で会計を行えるため、効率化や衛生管理の向上、人手不足の解消にもつながります。
さらに、ハンディターミナルを使えば営業時間中でも棚卸し作業が可能で、在庫管理の精度も上がります。
免税対応やインボイス発行機能を備えたPOSレジを導入すれば、外国人観光客への免税販売や、制度対応がスムーズに行えます。
POSデータの活用で売上分析から顧客管理までを一括で行い、デジタル化による店舗運営の効率化と利便性がさらに向上します。
POSレジを導入するなら、キャッシャーとの組み合わせがおすすめです。
タブレットレジはコンパクトな設計と高い操作性が魅力で、カウンター周りの省スペース化に貢献しますが、キャッシャーと連携することで、現金取引もスムーズに行えます。
特に飲食店や小売店では、キャッシャーがあると支払いの流れがより効率化され、会計ミスも減少します。
もし、新しいPOSレジの導入を検討しているのであれば、ぜひキャッシャーを検討してみてください。
関連記事:POSレジを外部システムと連携するメリットは?連携すべき企業の特徴を紹介