スーパーや飲食店など、さまざまな業界・業種で導入が進むセルフレジ。身の回りでも見かける機会が増えていますが、店舗運営にどのような効果やメリットを期待して設置を決めているのでしょうか。
今回は、店舗にセルフレジを導入する理由や導入店舗の具体例、設置時に気をつけること、導入の流れなどを解説します。
【今回のコラムをざっくりまとめると…】
この記事では、セルフレジの導入が店舗運営に与える影響を解説しています。人件費削減や業務効率化が期待できる一方で、顧客の操作負担や導入コストも考慮が必要です。適切なモデル選定と運用が成功のカギです。
店舗にセルフレジを導入する際、まず知っておきたい仕組みについて解説します。
セルフレジの仕組みには、商品を読み取る方法の違いから以下の2つのタイプがあります。
●バーコードを読み取るタイプ
●IC(RFID)を読み取るタイプ
バーコードを読み取るタイプは、セルフレジを導入している店舗のほとんどが利用している形態です。商品に記載されているバーコードを、バーコードスキャナで一つずつ読み取ることで、商品名や値段などの商品情報をセルフレジに反映させます。そして、画面上に表示された商品情報をもとに、顧客が代金を支払います。
一方、IC(RFID)を読み取るタイプは、かごに入った商品のICタグをすべて自動で読み取ってくれるため、より会計にかかる時間や手間を軽減できます。
セルフレジの仕組みの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:セルフレジの仕組みとは?バーコードやRFIDを利用した種類や事例を徹底解説
セルフレジとは、店舗におけるレジ業務の一部または全部を、利用客が自分で行う形態のPOSレジシステムです。セルフレジを導入する理由には、店舗側のメリットと顧客側のメリットがあります。そこで、店舗レジにセルフレジを採用する代表的な理由をご紹介します。
まず、店舗の衛生面の向上を目的としてセルフレジを設置するケースです。コロナ禍の影響で、スーパーや飲食店でも非接触での接客を好む方が増えており、セルフレジの導入によってそれを実現できます。 特に、すべてのレジ操作を顧客が行う「フルセルフレジ」では、お客様と店員の接触機会がなくなるため、より衛生面に配慮した店舗運営が可能です。
また、商品バーコードの登録はスタッフが行い会計のみお客様に任せる「セミセルフレジ」でも、店員がお金に触れる機会がなくなり、衛生面の向上が期待できます。
セルフレジでは、クレジットカードやQRコード、電子マネーなどの各種キャッシュレス対応が可能です。
そのため、現在支払い方法を現金に限定している店舗が、キャッシュレス決済などの多様化する決済方法に対応するため、セルフレジを導入するケースもあります。
セルフレジは、スピーディーなレジ業務を求めて導入される場合もあります。
特にセミセルフタイプのレジの場合、時間のかかりやすいバーコードの読み取りは店員が行うため、混雑しがちなレジを効率的に回せます。レジ待ち時間の短縮につながり、お客様の買い物時間を妨げる心配がありません。
セルフレジ導入店舗では、一般的な有人レジを採用した店舗より配置する店員を減らせるため、人件費を削減できます。端末の設置に初期費用はかかるものの、長期的な視点で考えるとコスト面への負担を抑えられるケースもあるでしょう。また、完全な無人店舗を実現できればより経営を効率化できますが、日本ではそれほどメジャーではありません。
無人レジを採用した店舗では、店員がお金を計算する必要がありません。そのため、レジ精算におけるミスのリスクを大きく低減できます。閉店後のレジ締め業務もスムーズに終えることができ、計算が合わないなどのトラブル防止に役立つでしょう。
セルフレジの概要やメリット・デメリットについては、下記よりご覧ください。
関連記事:セルフレジとは?導入すべき業種やメリット・デメリット、注意点を徹底解説
店舗にセルフレジを導入する顧客側のメリットは、以下のようなものが挙げられます。
●レジ待ち時間を短縮できる
●衛生的に買い物できる
●自分の好きな決済方法で支払える
●店舗によらず、同じ手順で決済が可能になる
顧客側の最も大きなメリットは、レジ待ち時間の短縮です。これまでよりスピーディーな会計ができるため、忙しいお客様も利用しやすくなります。また、そのうえで欠かせないキャッシュレス決済にも対応しているため、自身の利用しているキャッシュレス決済方法を好きに選んで決済可能です。
セルフレジを導入するメリットの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:セルフレジのメリット・デメリットとは?メリットを最大化するポイントを解説
店舗にセルフレジを導入するデメリットは、以下のようなものが挙げられます。
●導入コストとランニングコストがかかる
●新たなオペレーションが必要になる
●未払いや万引きなどのトラブルに遭うリスクがある
新しい機器を導入するため、費用や新しいオペレーションはもちろん必要です。そのため、導入前にしっかりと事前に準備しなければ、導入直後に混乱したり、資金繰りが悪化したりする可能性もあります。
デメリットを最小限に抑えるための方法は後述していますので、そちらをご覧ください。
大手コンビニにおけるセルフレジの店舗導入事例をご紹介します。多くの店舗で設置が進んでおり、それぞれの企業により、セルフレジのタイプなど特徴が異なっています。
セブンイレブンでは、2021年に約9割のセミセルフタイプのレジを導入済みです。レジスタッフはバーコードの読み取りやレジ袋の確認などを行い、利用客は手元のパネルで支払い方法を選択して精算機で決済します。店舗スペースがそれほど広くなく、レジの設置台数が限られるコンビニでも利用客のレジ待ち時間を短縮できます。
ローソンでは、セルフレジの導入が進められていますが、セルフレジ店舗やセルフレジ利用時間が決められており、台数を変動させて対応しています。消費者向けにセルフレジ会計の利用方法を発信しており、消費者の利便性を損ねないように工夫しています。
ファミリーマートでは、セルフレジの導入が進められている他に、2024年度までに無人決済店舗1000店体制を目指す計画が進められています。東京駅横にセルフレジ(レジレス)型無人店舗第1号店がオープンしていますが、そのすぐ近くには有人店舗を設けており、消費者が自由に好みの購買体験を選択できるようにしています。 ※レジレスは、顧客が自身のスマホ・携帯などで事前に認証登録しておくことで、レジによる会計を行わずとも、自動決済される仕組みです。
小売店やアパレルにおけるセルフレジの導入事例をご紹介します。自社の顧客の利便性向上を実現するために、それぞれの企業が工夫しています。
セルフレジは、ドン・キホーテの一部の店舗にも導入されています。レジと精算機が分かれたセミセルフレジが設置されており、利用客は買い物かごを店員に手渡し、読み取りが完了した後に移動して料金を支払う流れです。利用客の多いドン・キホーテでは、支払い方法が多様化しており、それに対応する目的で導入が進められています。
無印良品では、通常のレジに加えて無人型セルフレジが設置されています。商品バーコードやポイントカード(アプリ)の読み取りから支払い、袋詰めまで、すべてを利用客が行います。セルフレジの横にはスタッフが常駐しているため、困ったときにはサポートしてもらうことが可能です。
ファストファッションブランドのユニクロに導入されたセルフレジは、バーコードの読み取りが必要ありません。商品かごをレジに持ち込むと、商品に取り付けられたRFIDタグが自動的に読み込まれ、瞬時に購入点数や金額が計算される仕組みです。セルフレジに慣れていない方でも簡単に利用でき、レジの混雑緩和につながっています。 上記以外の小・中規模店舗でもセルフレジの導入は進んでいます。
100円ショップ大手のセリアでも、キャッシュレス決済や人手不足に対応するために、セルフレジの導入を実施しており、2024年3月期中に全店舗に拡大予定です。消費者の利便性を高めつつ、コスト削減のための業務効率化の一環として進められています。
ニトリでは、フルセルフレジを導入しています。ニトリのアプリを読み込み、会員証のスキャンもお客様が行う形式です。
クレジットカードの支払いは可能ですが、電子マネーやQRコード決済には対応していません。
セルフレジを導入している薬局を紹介します。
スギ薬局の一部の店舗では、フルセルフレジを導入しています。現金や商品券、ギフト券などの利用はできず、完全キャッシュレス決済です。
また医薬品や調剤薬、お酒の会計は有人レジでのみ対応しています。
サンドラッグでは、セミセルフレジを導入しています。そのため従来のレジのときとあまり変わらないオペレーションによる会計・決済業務を実現。
キャッシュレス決済やポイント支払いなどにも対応しています。
セルフレジを導入している飲食店を紹介します。
ケンタッキーでは、フルセルフレジを導入しています。基本的に、画面に表示された指示に従って会計・決済を実施します。そのためこれまでと異なり、店員と会話せずに自分のペースで注文から決済を行うことが可能です。
キャッシュレス決済や各種ポイントにも対応しています。
スシローでは、人手不足や業務効率化のためにフルセルフレジを導入しています。
お寿司の注文をタッチパネルから行い、会計時にはQRコードが記載されたレシートをセルフレジに読み込ませることで会計・決済が可能です。
クレジットカードやQRコード決済、割引クーポンに対応しています。
すき家では、牛丼チェーンに多い券売機ではなく、セミセルフレジを導入しています。伝票の読み取りを店員が行ってくれるため、お客様は代金の支払いのみ行う形式です。
キャッシュレス決済に対応しています。
マクドナルドでは、モバイルオーダーシステムやフルセルフレジを導入しています。モバイルオーダーシステムとは、お客様自身のスマートフォンから注文・事前決済できるシステムのことです。
この導入により、業務効率化やお客様の待ち時間の短縮などにつながっています。
モバイルオーダーシステムの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【飲食店向け】セルフオーダーシステムとは?種類やメリットを解説
店舗に新しくセルフレジを設置する場合は、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。ここでは、店舗にセルフレジを導入する際に注意することを解説します。
セルフレジを設置するには、意外とスペースが必要です。特にセミセルフレジの場合、レジと精算機を別に置く必要があるため、十分なスペースを確保しましょう。レジの周辺で支払いや袋詰めなどを行う際、スペースが狭いと身動きが制限され、お客様同士の事故やクレームにつながる可能性があります。 そのため、事前にセルフレジの設置スペースだけでなく、顧客やスタッフの導線までを考えて十分なスペースが確保できるかを確認することがおすすめです。
セルフレジを導入した場合でも、店舗を訪れたすべての方がスムーズに利用できるわけではありません。高齢者など、使い方の説明が必要になるケースも考えられるため、困った方がいたらすぐに対応できるようサポート用のスタッフを配置しましょう。
セルフレジは複数台まとめて導入するケースも多く、購入する場合は初期費用に数百万円かかることも。そのため、セルフレジを選ぶ際は、性能面だけでなくコストパフォーマンスも考慮することが大切です。初期費用が高額な場合は、レンタルやリースを利用したり、補助金を活用したりするのも良いでしょう。
セルフレジの設置店舗では、万引きや支払い忘れなどのトラブルが懸念されます。防犯カメラの設置や防犯マニュアルの策定、死角の排除などを徹底的に行い、セキュリティ面の向上に努めましょう。 店舗にセルフレジを設置する際は、上記のポイントに注意することが大切です。
セルフレジの魅力には気づいているものの、設置方法がわからず導入できていないケースもあります。そこで最後に、店舗へのセルフレジ導入の手順を解説します。
まずは、セルフレジの導入体制を整えましょう。具体的には、設置スペースを確保したり、導入後の運用マニュアルを作成したりします。また、自店舗の課題を踏まえ、セルフレジを導入する目的を明確にしておくことも大切です。
次は、設置するセルフレジを選択します。フルセルフレジやセミセルフレジなどの種類はもちろん、周辺機能やオプション、レジメーカー・提供会社の選択も含みます。必要な機能は業種や業態によって変化するため、疑問がある場合は担当者に相談するのが良いでしょう。
店舗に設置するセルフレジが決まったら、提供会社に問い合わせて資料を見せてもらい、見積もりを依頼しましょう。初めてセルフレジを設置する場合は、店舗の規模や業種に合わせて適切なプランを提案してもらうことも可能です。
見積もり内容に納得できたら契約に至ります。契約手続きは提供会社によって異なりますが、近年は手続のシステム化や簡便化が進んでいるため、負担はそれほどありません。契約前にサービス内容やコスト、サポートについて再度確認しておきましょう。
すべての手続きを終えたら店舗にセルフレジが設置されます。初期設定等は提供会社が行ってくれるケースと、そうではないケースがあります。担当者が行ってくれる会社を選ぶと設置後すぐに運用をスタートできるでしょう。
上記の手順を踏まえるとスムーズにセルフレジを導入できます。
セルフレジ自体についてはこちらの記事でも解説しています。
参考記事:セルフレジとは?概要からメリット・デメリットを分かりやすく解説
少子高齢化による人手不足や感染症などの影響により、今後も店舗へのセルフレジの導入が進むと考えられます。セルフレジも日々進化しており、店舗に合わせたさまざまな機能が登場しています。
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